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最後の恐怖へ
実家では、父も姉も優しく接してくれた。
私が話すまで、何も聞かずにいてくれた。
幸い、パートだが仕事も見つかり、働きはじめて、元気を取り戻していった。
「私、アパートに出るね」
「まだここにいればいい。何も気にすることはないんだ」
実家に住まわせてもらって約4ヵ月。
やはり居心地は良くなかった。
贅沢なものだ。
ちょっと避難させてもらって、さあ出ていきます、なんて。
ごめんなさい……
でもさ、若い時に家を出て、一人暮らしをしてきて、同棲、結婚、離婚、結婚、離婚、結婚、離婚。やっぱさ、実家は暮らしにくいんだわ。
ひとりが気楽なんだな。
私は父の優しさを裏切るように、アパートへ出た。
パートの給料ではギリギリだったが、狭いワンルームは、確かに私の部屋だった。
自身に新たな作品の上書きをすることもなく、落ち着いた、自由な毎日に、満足していた。
ここなら、街中でやつに会うこともないし、景色も違う。
父や姉に、恐怖を冗談ぽく言えるようにもなっていた。
そして、年が明けた。
シフト制の仕事で、年末年始もいつも通りの感じに過ぎていく。
ある日、仕事から帰ると、ポストに年賀状が届いていた。
今日何日だっけ?ゆっくりだな。
ん?住所、実家からの転送だ。
裏は自分で印刷したみたいだな。
ん?自転車?ん?
まさか…… まさかだよね……
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