24人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前のそういうとこ、何て言うか……何も考えてないのかもだけど……」
「え?」
「そういうとこも含めてオレ達ってやっぱ恋人っていうより友達の延長だなって思う訳よ」
「……嫌、なのかよ……」
最初の話題に戻ってしまった。
もうクイズ番組は頭に入ってこない。
何となく不安になり、三田村の顔を見る。
いつ見ても整った顔、今は笑顔が消えて真面目に口を引き結んでいる。その顔はちょっとだけ珍しい。
「……嫌な訳ないじゃん……」
オレの不安を感じ取ってか、三田村は優しく笑って手を伸ばしてきた。
三田村の指が頬に触れ、顔の輪郭をなぞるように顎へ落ち離れていく。
「もうちょっといちゃいちゃしたいって言ってるんだよ」
「……は?」
「ゆうま(ハートマーク)、そう(ハートマーク)みたいな、呼んでよ」
「……」
わざわざハートマークと口に出しながら、名前を呼べと言ってくる。
「そう(ハートマーク)」
「……そうじゃないんだけど、それが香川なんだよなぁ……そゆとこも好きだけどさ」
名前を呼べと言う割に、三田村は香川と言ってくる。多分無意識なんだろうけど。
好き、と言いながら体を近付け、オレの肩に頭を乗せた。猫が甘えるみたいだ。随分と大きな猫だけど。
「……そう」
「……どっちでもいいよ、お前が呼んでくれるなら」
三田村の腕はオレの腰に伸びて、背中を優しく撫でていく。
どっちでもいいなら最初から言うな、なんてきっと以前なら言ってしまったかもしれない。でも今はそんな風には思えない。
確かに、オレ達は恋人というより友達の延長みたいな関係だ。それが悪いとは思えなくて。
でも三田村は物足りなさを感じていたのだろう。
「……いちゃいちゃしたいならそう言えばいいのに」
だけど素直になるのは恥ずかしいし、今さらどう態度を変えたらいいのか分からないから。
「……じゃあ言う……香川ベッドいこ、いちゃいちゃしよ?」
「……え?あー……いま?」
「いま」
「……」
そういう気分ではない、と言えないような熱の籠った視線で三田村が見つめてくる。
仕方ない。
「風呂、入ってからな」
「一緒に入る?」
「入んない、待ってろよ」
「はいはい」
恋人というより友達の延長。だけど、恋人じゃない訳ではないのだ。
仕方ない、たまには呼んでやるか。
「ベッドで待ってろよ、想」
一瞬固まり、だけど直ぐに三田村は嬉しそうに笑った。
完
最初のコメントを投稿しよう!