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6 新じゃがのポテトサラダ
「やっぱりじゃがバターは新じゃがでやると美味いな〜」
「うん」
今日は実家から送られてきたじゃがいもを三田村が蒸してくれた。休日の昼食らしく、お茶ではなく缶ビールだ。
じゃがバターだけではなく、厚切りベーコンを焼いて塩コショウを振ったもの。ナスとトマトのチーズ焼きもテーブルの上には置いてある。朝食が遅めだったので炭水化物はなし。
いつもは二人掛けのダイニングテーブルでの食事も休日の昼飲みという事で、ソファーに座りながらまったりと楽しむことにした。
「オレ追加しちゃお……」
背徳感から迷っていたが、やはりじゃがバターのお供といえば。個人的に嵌っている食べ方が香川にはあった。
冷蔵庫へ向かう香川に、どうした?という視線が追ってくる。
冷蔵庫から瓶を取り出し、ソファーへ戻れば三田村が手元に視線を向けた。
「最近それ好きだよな」
「三田村も使う?」
「……ちょっと貰う」
あつあつでホクホクのじゃいがいもにバターを乗せ、更に持ってきた食べるラー油を少々かける。油イン油。掛けているものがじゃがいもと言えど背徳感が高い組み合わせだ。
じゃがバターと言えば塩辛も鉄板ではあるが、二人暮らしのこの部屋に塩辛が置かれる事はほぼない。嫌いではないので、物産展などで美味しい塩辛が手に入る時はご飯のお供として冷蔵庫の中にある事もある。
「やっぱり美味しい」
「美味いよな……カロリーやばそうだけど」
ほぼ三食三田村が作るご飯なので、美味しくて食べ過ぎがちだ。一緒に暮らし始めて2年、ウエストがきつくなっている気もするがまだ……たぶん、大丈夫だ。サイズ変更の危機に陥ったらダイエットしよう。
毎日こんなにもカロリー高いものばかり食べるのではないのだ。たまの休日のこと。
たまには。と言い聞かせながら、じゃがいもをフォークで口に運ぶ。
あまりラー油をかけすぎるとバターの香りとコクが消えてしまうので、適量を心がける。ニンニクチップのサクサクとした食感もいいアクセントになる。
そしてこれはビールに合う。
他のおかずというか、つまみも勿論ビールに合わせて三田村が作った。毎週やる訳では無いが、こうやって昼間から2人で飲むのは気分がいい。特に天気のいい日に網戸から入る爽やかな初夏の風を感じながら飲むのは、家飲みとアウトドアのいいとこ取りだと思っている。
「は〜美味し」
「バケットあったほうがいい?」
「んー、大丈夫」
ナスとトマトのチーズ焼きはバケットに乗せても美味しいけど、このままでもいいつまみになる。
「じゃがいも沢山貰ったからな、ありがたいよ」
「料理に色々使えるし、蒸しただけでも美味いしいいよな、実家の時はよくおやつに食べてた」
「そうなんだ」
実家は農家という訳では無いが父が畑を借り野菜作りを趣味としている。
親戚でも野菜を作ったりしている家があるので、じゃがいもは小さい時から貰ったりしていたので時期になると段ボール箱いっぱいにじゃがいもがあった。
蒸したものは、余って冷えても美味しく食べられる。なので、おやつによく出てきた。
「じゃがいもで何か食べたいのある?」
ビールをちびちび飲みながら三田村が聞いてくる。
「好きなの作るよ」
三田村は趣味で作っているとはいえもう何年も料理をしているのだ。家庭料理であれば大抵のものは作れるようになっている。
「うーん、そうだな、肉じゃがは食べたいな……あと、なんか細くして焼いたやつ」
「あー、あれなんだっけ、あるなそういう料理……あとはサラダとかか〜」
「ポテトサラダか……」
「きらいじゃないよな?」
呟きを拾った三田村が被せるように聞いてくる。
「きらいじゃないよ」
「なに?」
「え?」
「……前に作った時は何も言ってなかったけど、何かある?」
三田村は微妙なニュアンスを嗅ぎ取ったとでもいうのか、更に質問を重ねる。
「いや、ないけど……」
「けど?」
「んー……実家で出てたやつたまには食べたいって思っただけ、三田村の作るやつも美味しいよ」
「……実家の味か……」
何故か三田村は項垂れてしまった。
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