1 アイスキャンディーとエプロン

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 二人掛けのダイニングテーブルにはオクラと豚そぼろ丼、なすと麩の味噌汁にきゅうりともやしのナムルが丼の隣に並んでいる。 「三田村食べた?」 「あぁ、でもナムルちょっと食べようかな」  椅子に腰掛けた香川に麦茶のグラスを渡しながら、三田村はキッチンへと戻った。  その後姿を見て香川はげんなりとした気分になった。 「麦茶よりビールの方がよかった?」 「……麦茶でいい」  何でトランクスなんだよ……????!  なんて、突っ込まないからな……!!!!  背中はエプロンの紐が交差して縛ってあり、その下はパンツ一丁。エプロンに合わせたのか知らんけど、紺色のトランクス。そこは……なんかこう……もっと色気のあるパンツにすればいいのに……された所で無視するけど……。いっそ履かないでいた方が……いや、それの方が何か嫌だな。  裸エプロンて……なんか……思っていたのと違う……。  気を取り直して夕飯を食べよう。 「いただきます」  召し上がれとキッチンから返事が聞こえた。  丼の上には一口大に切ったオクラ、その下に炒めた豚バラ肉が何枚か並んでいて、更に下にはそぼろが掛かって白飯が見えない。 「はい」 「ありがと」  麦茶の入ったグラスがテーブルに2つ置かれる。三田村はナムルの小皿と味噌汁を持ってきたようだ。  正面に座り、香川が食べている所をじっと見つめる。 「おいし?」 「うん」 「よかった」  心配などしていなかっただろう、と言ってやりたいが毎回でないにしろ、たまに美味しいか聞いてくる。  甘じょっぱい味付けのそぼろが食欲をそそる。  一緒に入っているオクラと豚肉は別に炒めたようで、塩コショウで味付けてある。皿に盛るのが面倒で丼にトッピングしたというところか。たまにこういう雑な時もあるが、文句はない。 「食べたらシャワー浴びちゃう?疲れたろ、早目に寝ようか」 「……うん」  労るような視線が優しい。たとえパンツ一丁のエプロン姿に言われても、疲れた体が少しだけ軽くなる。ついでに味噌汁を啜る。やはり癒される。暑い夏でもたまには味噌汁を飲みたくなるのは日本人としては当然だろう。 「はぁ……」 「今週ずっと遅かったよな、来週もか?」 「んー……まぁ週明けはまだ残業あるかな……でも忙しいのもせいぜい来週までだと思うよ、夕飯別々になっちゃうしオレのは……」 「お前が嫌じゃなければ作っておくよ、帰ってくるの遅いからゆっくり準備出来るし」 「……やじゃないよ」 「なら作っとく」 「うん……」  そう言われるだろうって事は予想していたけど、待たせるのは悪いと思ってしまう訳で。でも、気にするなって瞳で三田村は見つめてくる。  嫌な訳はない。腹が減ればどこかで食べてくるって前もって言ってもいいのだ。でもそれは言い出せなくて、いつも甘えてしまう。  あぁ、折角いい雰囲気だし、三田村は優しく微笑んでイケメンだな、なんて思うのに……肩から下が残念でならない。
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