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私がまだ受験生だった頃でした。高校三年生の私は実家は群馬にありましたが、東京都内の有名な予備校に通いたかったので、予備校の寮で暮らしていました。高校は群馬にありましたが、自称進学校の私立だったので高校三年生は殆ど学校に通わなくても良くなるんです。だから、当時の私はずっと都内で予備校と寮を往復する暮らしを続けていました。
私は予備校のとある先生のことが好きでした。担当は英語だったのですが、残念ながら、校舎や時間割の関係で私はその先生の講義を取ることが出来ませんでした。でも、一度だけ、体験授業に参加してから、私はその先生が監修している参考書で勉強し、時々、講師室で先生に質問しに行ったりしました。
受験期の私の心の支えになっていたのは、その先生が書いているブログでした。そのブログには、様々な先生の教え子の合格体験記が書かれており、それを読むことで「私も頑張ろう!」という思いが湧き立ち、モチベーションを維持させることが出来ました。
そして、そのブログの内容が話の本題なのですが……。その先生のブログの中で一番、印象に残っているお気に入りの投稿があったのです。今から、それをお見せしますね。プライバシー保護の観点から、固有名詞等にはモザイクを掛けさせて頂いています。
「今日、私(これは予備校の先生の事です)に会いにきてくれたのは、昨年の卒業生、〇〇大学の〇学部のYさんと、同じく〇〇学部のKさんでした。
聞けば、お二人は違う高校の出身で、私のクラスで授業を受けている時も面識はなかったそうです。まぁ、人数は多いですからね。
そんなお二人が、偶然、同じ中国語の授業を取り、同じ塾の私のクラスで授業を受けていたことが分かり、お友達になられたんだそうです。
友達になってから、お互いのことを知るにつれ、実は住んでいる所がとても近くで、さらにその事をお母様にお話したところ、なんと幼稚園に入る前に一緒に遊んだことのある仲だったということが判明したそうです。
お二人共、とてもビックリしたそうです。そんな奇跡って本当にあるんですね。
授業をしながら、ふと思う事があるのですが、私の目の前に座っている生徒さん達は数ある予備校の中から、この塾を選択し、さらに幾つもある講座の中から私のクラスを選んでくれました。
小さいけど、立派な奇跡ですよね」
このお話がとても印象に残ったのです。このお二人が通っておられる大学は私の第一志望の大学でもあり、超難関校でした。でも、お互いが素晴らしい先生に出会えたという奇跡があり、その奇跡がまた新しい奇跡を繋いだということに感動させられました。
それから、私は第一志望の都内の大学に受かることが出来ました。試験の休み時間中もこのブログの内容を見ていたので、きっと私にも奇跡が起こったんだなと思い、嬉しくて涙が溢れそうになりました。
そして、私は臨床心理学を四年間勉強し、大学院から奨学院大学に入学し、九条先生のゼミに所属しました。その時までは、私は純粋にこのお話を信じていたんです。
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