第一章

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「わかりました。努力いたします」 「あぁ、頼むよ」 「正直、社長は何でもご自分でなさるので、私は必要ないと言われるのだと思っていました」 ハッキリとした口調でそう言えば、匠馬は「それでいい」と、満足げに微笑んだ。 「神谷は休みの日は何してる」 「お休みの日は映画を見たり、本を読んだりしています」 「そうか。俺はバイクに乗るのが好きだ。あとは、絵を見に行ったりすることもある」 バイクとは意外だ。手首が少し日焼けしているのはそのせいなのだろう。 「映画はいつも何を見る」 「なんでも見ます。邦画も洋画も見ますし、アニメを見に行ったりもします」 とはいえ、最近はあまり行けていない。理由は簡単。金欠なのだ。 あの日、澪はATMで貯金のほとんどを下ろすと、誠に手渡した。誠は泣きそうな顔で喜んでいた。けれどあれ以来、誠は澪がメールを送っても、返信をくれないし、電話にも出ない。澪は何かあったのではないかと心配している。
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