第一章

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それから他愛もない話をしていると、あっという間に次のホテルに着いた。 少しだが、この二時間でお互いのことが知れた気がする。 匠馬はあぁ見えて、意外と偏食だということ。自宅には趣味のバイクが三台ほどあって、先週は一人で九州まで行ったのだとか。やはりタフな人だと澪は思った。 「着いたぞ」 「はい」 待ち構えていた総支配人に出迎えられ、中へと足を踏み入れる。またさっきのように、ロボットだと揶揄されるかもしれない。でも澪はさっき匠馬が言ってくれた言葉に救われていた。 『本音でぶつかりあえるパートナーでいたい』 つまり、澪には対等でいてほしいということなのだろう。匠馬に期待していると言われたようで嬉 しくもあり、匠馬についていこうという忠誠心が増した。 「総支配人の今田です。どうぞよろしくお願いいたします」 「本郷だ。中を少し見せてもらう」 「はい」 手短に挨拶を交わし、ホテルの中を視察する。澪は匠馬の後ろをついて回った。
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