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ここのホテルは最近大手和食チェーンのお店を併設したことで、売上を伸ばしている。そのお店を利用する客が、ついでに泊まって行くか、と思えるような価格設定にしているためだろう。
前社長の時は、高級志向を売りにしていたが、匠馬に代わってからは、小規模で高級、且つ型にはまらない個性的なスモールラグジュアリーホテルにシフトチェンジし始めた。それが好評で、来年には外国の島々に建設が決まっている、
一時間ほどで視察を終えると、再び車に乗り込んだ。澪が「私が」と申し出たものの、やはり譲ってはもらえなかった。
「遅くなってしまったな」
「そうですね」
時刻は20時を回っていた。一日で何県もまたぎ、歩き回ったため足は棒のようになっている。それに少し靴ずれしてしまった。
「悪いな、こんな時間になってしまって」
「いえ。それより社長のほうこそ大丈夫ですか?」
「俺は平気だ。このくらいなんともない」
涼しい顔で夜道をすいすいと走らせる。その横顔は何度見ても、うっとりしてしてしまう。
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