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「なんだ。ジロジロ見られると照れるだろ」
「す、すみません」
慌てて窓のほうを見やる。すると、澪のお腹がぐぅっと鳴った。
(嘘、やだ……)
咄嗟にお腹を押さえたが、時すでに遅し。匠馬の耳にもしっかり聞こえたようで、それを知らしめるように、クスクスと笑う声が隣から聞こえた。
「すみません」
「謝ることはない。こんな時間まで連れまわした俺のせいだ」
澪は、顔を真っ赤にしながら小さくかぶりを振る。
「飯でも、と言いたいところだが、こんな田舎じゃ開いてる店もないしな」
確かに。さっきから窓の外を眺めていたが、外灯がぽつぽつとあるだけで、飲食店は全くといって見当たらない。どこもかしこも、田畑ばかりだ。
「大丈夫ですので。お気遣いなく」
「さっきのホテルで食事を済ませておくべきだった」
「あの、本当に大丈夫ですから」
そんな話をしていると、少し先にコンビニが見えた。
「あそこ寄るか。これを逃したらしばらくコンビニはないかもしれないし」
そう言われナビを見れば、しばらく山道が続いていた。高速に乗るまで、かなり距離がありそうだ。
ハンドルを切りコンビニの駐車場に入ると、匠馬は颯爽と車から降りていった。
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