第一章

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「なんだ。ジロジロ見られると照れるだろ」 「す、すみません」 慌てて窓のほうを見やる。すると、澪のお腹がぐぅっと鳴った。 (嘘、やだ……) 咄嗟にお腹を押さえたが、時すでに遅し。匠馬の耳にもしっかり聞こえたようで、それを知らしめるように、クスクスと笑う声が隣から聞こえた。 「すみません」 「謝ることはない。こんな時間まで連れまわした俺のせいだ」 澪は、顔を真っ赤にしながら小さくかぶりを振る。 「飯でも、と言いたいところだが、こんな田舎じゃ開いてる店もないしな」 確かに。さっきから窓の外を眺めていたが、外灯がぽつぽつとあるだけで、飲食店は全くといって見当たらない。どこもかしこも、田畑ばかりだ。 「大丈夫ですので。お気遣いなく」 「さっきのホテルで食事を済ませておくべきだった」 「あの、本当に大丈夫ですから」 そんな話をしていると、少し先にコンビニが見えた。 「あそこ寄るか。これを逃したらしばらくコンビニはないかもしれないし」 そう言われナビを見れば、しばらく山道が続いていた。高速に乗るまで、かなり距離がありそうだ。 ハンドルを切りコンビニの駐車場に入ると、匠馬は颯爽と車から降りていった。
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