第一章

15/18
前へ
/159ページ
次へ
「ちょっと待ってろ」 「社長、ここは私が……」 「お前はじっとしてろ。足が痛いんだろ」 「え?」 どうしてそれを……? そんな素振り見せたつもりはなかったのに。 匠馬は、すみませんと頭を下げた澪を置いて、店の中へと入って行く。そしてものの数分で戻ってくると、小袋を差し出した。 「もう閉まるらしい。これしか売ってなかったが、食べておけ」 「あ、ありがとうございます。お金お支払いします」 「そんなのいいから早く食え」 「あ、はい」 袋の中を見ると、肉まんが二つ入っていた。中から出した途端、ふわっといい香りがして、またお腹が鳴った。 「田舎のコンビニは24時間じゃないんだな」 「そういえば、うちの田舎のコンビニも、21時で閉まってました」 「そういうものなのか」 きっと匠馬は都会生まれの都会育ちなのだろう。店じまいを始めたコンビニを、興味深そうに見ている。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1813人が本棚に入れています
本棚に追加