第一章

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「親父が倒れた時、君が応急処置をして、通報してくれたと聞いた。もし少しでも遅かったら、助からなかったと医者も言っていた。君はずっと親父の傍で、公私ともに支えてくれたのだろ? でなければあんな適切な処置できないはずだ」 「いえ、そんな……私は何も」 まさか匠馬から謝辞を受けるとは思いもしなかった。澪はただ、当たり前のことをしただけ。 突然目の前で倒れた幸之助を介抱し、救急車を要請した。その時やったことと言えば、足を高く上げ、吐物を詰まらせないよう横を向かせただけ。 高血圧で薬を飲んでいたことしか知らなかった澪もすごく驚いたし、苦しそうに胸を押させる幸之助を前に、体が震えた。 病院で一通り検査した結果、幸之助は心筋梗塞という診断を受けた。すぐにどうこうするほどではないが、会社のために身を引くと言った幸之助の判断を、澪は苦しい思いで聞いてた。 幸之助が倒れて2日後、匠馬が病室に現われた。そして現在に至る。
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