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「よし、急ごう」
ナビを設定すると、匠馬は軽快にハンドルを切った。
何をさせてもエレガントで、所作が美しい。それに、毎日ハードワークにも関わらず、疲れの一つも見せない。
きちんと休める日はあるのだろうか。横顔を見ながらそんなことを考えていると、匠馬が意外なことを口にした。
「疲れただろう? 少し寝ていたらいい」
「え?」
寝る? まさか。思わず目が点になる。秘書である澪が社長の隣で眠るなんて、どんな状況でもあってはならない。例え森の中で遭難したとしてもだ。そうなれば澪は一晩中火の番をし、体を張って匠馬を守るだろう。今こうやって隣にのうのうと座っている時点で、おこがましいと感じているくらいだ。
「出来かねます。私より、社長がお休みになったほうがよろしいのでは。帰りは私が運転をしますので、どうぞごゆっくりなさってください」
淡々と言えば、匠馬はなぜかクスッと笑った。何かおかしいことを言っただろうかと、澪は首肯する。
「あの、社長?」
「相変わらず堅いな、君は。ロボットと一緒にいるみたいだ」
「ろぼ、ロボット……ですか?」
つい、口ごもってしまった。
匠馬に最初に会った時もそう言われた。それに、さっきのホテルで従業員たちに「あの秘書さん、美人だけどホッパーくんみたい」と言われていたのは知っている。
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