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私だけが見たみたいで、誰もちっちゃなおじさんの話をしていなかった。
だから私は、これは私だけの秘密だ!、と思って、皆がいなくなった後にザクロの所に戻ったんだ。でも、誰もいなかった。あ、アリさんはいたよ。ザクロの実を一生懸命運んでた。
でも、私は自分の目を信じた。だって、見たもん。見たんだもん。
だからね、周りに他の人がいないのを確認してから、呼んだんだ。
「ちっちゃいおじさん出ておいで」
ワクワクしながら首を動かせるだけ動かしてどこかに隠れてないか探したんだ。でも、出てこなかった。私は凄く残念だった。
でも、きっといるって信じてたから、ね。
「今度一緒に遊ぼうね!」
誰もいないザクロにそう叫んだんだ。
そしたら、どうなったと思う?
「はーい」
柵の向こうから、お父さんよりちょっと高くて、お母さんよりちょっと低い返事が聞こえてきたの。もうこれは、ちっちゃなおじさんで間違いなかったんだ。だって、だってね。
柵の向こうの道路を、車と一緒に白い球がコロコロって転がって遠ざかったんだもん。
これが、私とちっちゃなおじさんの出会いなんだ。
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