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公然の花園
さまざまな野の花が咲く園に、ルイーゼとロッテは強制的につれてこられ
た。
脱出アイテムは遠くまで運ぶ効力はない。ここはダンジョンのそばだ。めず
らしい野花がそこかしこに生えている、野草の楽園だった。学校の裏に、こん
な場所があったとは。
ルイーゼのアイテム使用によって、謎解きに熱中していたロッテも強制的に
ダンジョンの外へととばされ、彼女はおかんむりだった。
「どうしてくれるんですの、ルイーゼ! もう少しで第三関門の謎が解けそう
だったのに!」
「いや、あんたが謎解けたとしても、どう考えてもわたしには無理だったし…
…。悪かったって」
ルイーゼがひざを突いているすぐそばに、可憐な小さな赤い実をつけた植物
があった。「ゆきいちご」だ。
「ほら、ここに『ゆきいちご』があるってことは、クリアできたんじゃな
い?」
「脱出アイテムを使ったのにクリアなわけないでしょ」
むっつりと怒ったままで、ロッテは這うように移動してゆきいちごの花と実
を丁寧に摘み始めた。たくさん自生しているため、彼女がその手にたくさんの
ゆきいちごを採っても、まだ果実は赤々と野に実っている。
「わたしは別にいいですわよ。でも、あなたは……」
「わたしのこと、心配してるの?」
「し、心配なんてこれっぽっちもしてないわ! さっさと落第でも退学でも転
校でも、好きなようになさいな!」
ゆきいちごを積み終えると、ロッテはリュックを抱え直し、さっさとシュピ
ール魔法学園に向かって早歩きで向かった。
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