カブトムシとライオン

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7月下旬の夕刻、仕事のため留守にした我が家へ半月ぶりに戻った私は、縁側に腰を下ろしながら庭ではしゃいでいる息子の姿を眺めていた。 出張に出掛ける前日も、確かこうしてはしゃぐ子どもの姿を眺めていた記憶が脳裏を過ぎる。   なんだろう。 たった二週間家を留守にしただけなのに、この光景が何やら妙に懐かしく感じる。 きっとまだ明けない梅雨の影響と、もうとっくに移り変わっても不思議ではない四季の中で最も暑い季節が間近に迫っているという気候の変化により、草木がほんの数日の間にその姿を驚くほどの変貌を遂げ、庭の景観を一変させてしまったことが原因となっているのだろうか……。子どもの姿はまるで録画した映像を再生しているように見えるのに、その背景がだけが微妙にズレを生じさせてしまっていたことが分かる。   どうあれ、息子がその半月の間に急激に成長したと言うわけでもなく、それは私にとって大した変化ではないということだけははっきりと言える。
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