・手紙に込めた想い。

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・手紙に込めた想い。

――  真衣はおとなしくて、あまり目立たない子でした。特別いじめられていたとか、さけられていたとか、そういうのではなくて。ただ、ひとりでいるのが好きな子のようでした。  休み時間になると教室のすみっこで静かに本を読んでいるような、そんな子でした。  長い黒かみの、かわいい子。  わたしはそんな真衣の事を、いつも少しだけ気にしていました。  理由は、わたしには友達がいっぱいいたからです。それで、毎日とても楽しい日々を過ごしていたからです。  だから、おせっかいかもしれませんが、いつもひとりでいる真衣がさみしそうに見えて、なんだか放っておけなかったのです。  ある日の放課後、わたしは思い切って、真衣に話しかけてみる事にしました。  友達になろう、と言ったのです。  すると真衣は、きょとんとわたしを見ました。そして、こんな事を言ったのでした。 「……トモダチ。わたしとケイヤクするって事?」  真衣は確かに、そう言いました。もちろんわたしはびっくりしました。  だって、友達というのは、ケイヤクしたりするものではありません。  そう伝えると、真衣はますますフシギそうな顔をしました。 「じゃあ、わたしとあなたがもしトモダチになったら、どうやってそれをショウメイするの?」 「ショウメイとか、そういうのじゃないよ。一緒にいて楽しいと思えれば、それでもう、友達なんだよ」 「そんなの、へん。ケイヤクのショウメイがなければ、信じる事なんて出来ない」  どうやら真衣は、わたしとは根本的に考え方が違っているようでした。  ただ、真衣の言い方や、たい度に、わたしはとても腹が立ちました。  だから、わたしはその時真衣に対して、とてもひどい事を言ってしまいました。 「ケイヤクとか、そんな変な事を言ってるから、杉内さんには友達がいないんだよ」  でも、真衣はそれに対して、怒りも泣きもせず、くす、と笑いました。  その笑顔はとてもかわいくて、でもとてもブキミな笑い方でした。 「トモダチなんて、すぐにつくれる」 「うそ。うそつき。そんなの出来っこない」 「うそじゃない。わたしがトモダチをつくらないのは、ただ、面倒だから。つくろうと思えば、すぐだよ。このクラスの全員と、すぐ仲良しになれるよ」 「じゃあ、やってみせてよ! 出来っこないくせに!」  わたしは、とてもむかむかしました。わたしがむかむかしているのに、真衣はとても冷静で、それがまた、むかつきました。  だから、うそつき、うそつき、とたくさんいって、わたしはその日、そのまま帰りました。  そしてその日の事を、わたしは今でも、ずっと後悔しています。  だって、真衣の言葉は、うそではなかったのです。  次の日、教室に入ると、真衣はクラスの全員に囲まれて、楽しそうにおしゃべりしていたのですから。
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