・手紙に込めた想い。

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「いったい、どうなってるの?」  その日の放課後、わたしは真衣に問いただしました。いったい何が起きたのか聞きました。  すると真衣はまた、くす、と笑って、「ケイヤクしたの」と言いました。  わたしには、真衣の言う事が分かりませんでした。 「ケイヤクって、なんなの? 何をしたっていうの?」 「そんなに、難しい事じゃない。ただ、仲良しのしるし(、、、、、、、)を、みんなにつけただけ」  そう言って、真衣は椅子から立ち上がり、わたしと向かい合います。ふわ、と長いかみが揺れ、甘いにおいがわたしの鼻先をすっと通り抜けました。  あの時の真衣の姿を、わたしは今でも忘れる事が出来ません。  突然。本当に突然でした。  真衣の目はみるみる真っ赤になっていき、おまけにギラッと歯をむき出したのです。  恐くて。  本当に、恐くて。  わたしは1歩も動けなくなりました。  真衣は、おびえているわたしに近づいて、目を細めました。 「わたしね、吸血鬼なの」  心ぞうが、どくんと音を立てました。 「うそ。……そんなの……うそ」 「大好物は、人の血」 「やめて」 「どうして? 昨日、言ってくれたのに。わたしに、トモダチになろうって。なら、ケイヤクしようよ。 わたしがあなたの血を吸えば、あなたはわたしの事が大好きになる。その時あなたに残るわたしの歯形は、あなたとわたしが仲良しのしるし。――ほら」  真衣は、さらにわたしに顔を近づけて、わたしの首に唇をつけました。  ちゅ、という、音。  その時わたしは、生まれてからその時までで、きっと1番大きな声を出しました。 「やめてっ!!」  わたしは真衣の事を突き飛ばしました。わたしの足はがくがくして、目からはたくさんの涙が出ていました。 「……やめて」  わたしはもう1度言います。すると真衣は、「うそつき」と頭を振りました。 「ほら。やっぱり、昨日のはうそだった。わたしとトモダチになろうって。あれはうそ」 「うそじゃないよ……でも、こんなのおかしいよ。だって、こんな事しなくたって、友達になれるもん」 「そんなの、ショウメイ出来ない」 「出来るよっ……」  わたしは、震える声で言いました。 「……そんなの、わたしがショウメイしてあげる。ケイヤクとか、しるしとか、そんなのなくても、わたしたちは絶対友達になれるもん。わたしはずっとずっと、杉内さんの……ううん、真衣の、友達でいる。約束する」  真衣は納得していないようでしたが、わたしは真衣の手を握って、小指と小指をからめました。  真衣は小首をかしげます。 「……何?」 「指切り。ずっと友達でいる、約束」 「ヤクソク?」 「そうだよ。ケイヤクとかショウメイとか、そんな堅苦しい事じゃなくって、これが、真衣とわたしがつながったあかしになるの」 「あかし」  真衣は、興味深そうに目をくるくる動かして、つながった小指を、きゅ、と握り返します。  そうして、わたしと真衣は、友達になったのです。
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