17 衝動②

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17 衝動②

俺は何をしているんだろう。 滅多に出さない馬鹿力で史遠(しおん)を抱き寄せ、キスしてしまったことは覚えている。 平手打ちもグーパンチも無かった。史遠のきれいな瞳がびっくりしすぎて、こぼれんばかりに見開かれていた。 頭がぼーっとして、ふわふわして、いつのまにか俺は史遠の髪の中に手を差し込み、舌も入れていた。 史遠の瞼がいつしか閉じて、俺もつられて目を閉じた。史遠の唇は柔らかくて、シャンプーの香りが鼻をくすぐる。そしてこの奇跡を大事にしたい俺の気持ちを無視して、俺の右手が行動を起こした。 腰のカーブをなでなで、なでなでしながら徐々に降りてゆき、史遠のほどよく引き締まった尻に手が届く。やっぱり殴られるかな、と過ぎるが、今のところ無事。出来るだけ優しく揉み揉みしつつ、さらに舌を絡める。うっすらと瞼を開けて様子を伺うと、なんと史遠の顔は真っ赤っ赤。 この反応は・・・ 俺はてっきり、酔った勢いで史遠にイカガワシイことをした前科があると思い込んでいたが、このビギナー感は・・・違うのか?俺は何もしてなかったのか?じゃあ何であんなに避けられてたんだ? ・・・後で考えよう。今はそれどころじゃない。 右手に自然に力がこもり、史遠の尻をぎゅっと掴む。びくん、と反応がある。でもやはり拒まれはしない。俺はアクセルを踏みきった。 史遠をひょいと持ち上げ(こういう時、馬鹿力は役に立つ)、自分のベッドに運ぶ。えっ、と聞こえた気がしたがここまできたら後には引けない。 仰向けに横たわった史遠は、やはり赤い顔で俺を見上げていた。 「・・・史遠・・・」 「くに・・・まる・・・」 「好きだ」 改めてキスをすると、史遠は気持ちよさそうに目を閉じた。柔らかい髪が枕に広がって、頬が紅潮して、目が潤んでいる。俺は出来るだけ丁寧に、優しくキスを繰り返し、普段よりずっと慎重な手つきでTシャツの中に手を滑り込ませた。 なめらかな肌。弓道で鍛えた身体はほどよく筋肉がついている。布の中で手のひらに当たる乳首を弄ぶと、閉じていた瞼がさらにぎゅっとなる。 もう後には引けねえぞ、ともう一人の俺が頭の中で言っている。 そんなことわかってます。 「・・・っ・・・」 耐えきれなくなった史遠が、小さく喘いだ。俺もそろそろやばくなってきた。Tシャツをたくしあげようとすると、手を掴まれて頑なに拒まれた。なぜか上半身を晒すのが嫌らしい。 俺はそちらをあっさり諦め、とうとう最後の砦に手を伸ばす。ちなみに一緒に風呂に入ったことはない。(風呂屋で会ったのはノーカンである)つまり、史遠の史遠にお目にかかったことがないわけで・・・ 足の付け根をなぞると、びくんと膝が震えた。 きっとこの様子では「抱かれる」のは初めてに違いない。もちろんビギナーに無理をさせるつもりはなく、今日はイケるところまでと思っているが、あまり自信はない。何の自信かというと、俺がちゃんと我慢できるかどうかの自信だ。 とはいえ、本当に好きな相手は大切にしたいと思っている。 史遠のそこを布越しに優しく包み込むと、頭上から小さく、あ、と聞こえた。ちょっと上擦っているのが色っぽくてそそられる。 デニムの上から擦るのもいいが、そろそろファスナーを降ろしたいぞ。隙間から黒のボクサーパンツがのぞく。・・・・・・はい、限界。 我慢出来ずデニムをぐーっと引き下ろす。 「・・・あっ・・・」 今度ははっきりと聞こえた。上半身を起こし、恥ずかしそうに俺を見下ろしている。 俺は言った。 「・・・力抜いて」 自分のイケボに驚く。たま〜に出る、超低音ボイス。その効果か、強ばっていた史遠の足からちゃんと力が抜けた。 デニムを取り去り、パンツだけに守られたそこに、俺は優しく口づけた。 「ぁんっ・・・」 上半身を仰け反らせ、史遠は今までで一番セクシーな声を出した。たった一枚の布は熱を持ったそこをかろうじて隠してくれているが、ちゃんとスタンバイされている史遠の史遠がくっきりと浮かび上がっていて、俺は安心した。 それは「拒まれていない」ということで。 ウエストのロゴ入りのゴムをずらそうとすると、もじ、と膝が動く。その動きが俺の劣情をさらにかきたてた。今度はためらいなくパンツを引き下ろし、史遠の史遠は解放と同時に天に向かって勃ちあがった。 史遠は腕をクロスして、顔を隠した。 「史遠・・・・・・」 俺はまず手でそこに触れた。 シャワーを浴びてきた清潔な肌は、赤く充血してして張り切っている。色が白いから、そこだけが浮かび上がって見えた。どちらかというと痩せ形で線も細い史遠だが、しっかり男であると主張するそこを俺は優しく包み、ゆっくり擦り上げた。 「・・・っぁ・・・っん・・・」 顔を隠した腕の向こうで史遠の悩ましい声が聞こえる。愛おしさがどんどん膨らんでゆき、俺は気づくと史遠を口に含んでいた。 「はぁっ・・・・・・」 イヤイヤするように頭を左右に振る史遠。清い史遠は、男にくわえられることなんて初めてだろう。身に覚えのない快感に、足が震えているようだ。 で、史遠は俺を受け入れてくれたけれど、これは、同じ想いなんだと受け取っていいのかな。流されただけ・・・と言っても男同士だし、気持ちがなきゃ流されることもないはず。必死に受け入れようとする可愛いビギナー感が何とも言えない。 そんなことを考えながら、俺はひたすら史遠の史遠を愛撫する。 「く・・・にまる・・・っ・・・」 史遠の手が俺の頭を押し返す。そろそろ限界か。 俺は構わず、剥き出しになった史遠の二つの丘をしっかりと掴み、舌を動かした。 「んぁ・・・っあああぁっ・・・」 がくん、と大きく痙攣して史遠が放った。俺は口の中に熱いそれを受け止めた。 荒い息をしながら、未知のビッグウェーブに持って行かれた史遠は、仰向けに足を投げ出したまま動かない。ふと下を見ると、準備万端な俺の俺がどうにかしてくれ、と訴えてくる。しかし最後までするのは無理だぞ、息子よ。 「史遠・・・」 俺は史遠ににじり寄り、まだ顔を隠している腕を左右に開いた。 涙目の史遠は、頬を赤らめて俺を見上げた。言葉を発するのにもエネルギーがいるらしい。何とも言えない表情で俺を見つめる史遠の耳元で、俺はもう一度、好きだ、と言った。 緩慢な動きで史遠は腕を伸ばしてきた。俺の首に巻き付けて、おそるおそる力を入れる。 初めての史遠からの行動。俺の心臓が大音量でひとつ、どくん、と鳴った。 「国丸・・・・・・」 「嫌じゃ・・・ないか?」 ふるふる、と史遠は二回首を横に振った。 「お前が嫌なことはしたくないから」 かすかに微笑み返してくれた史遠は、だいじょうぶ、と小さな声で答えた。 それがどういう意味の大丈夫なのか、俺は悟った。そして俺は史遠の、まだ誰も迎え入れたことのないであろう後ろの入口をそっと指先で解し始めた。
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