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19 真相
「辺見です」
「東雲だけど」
「先日はお世話になりありが・・・」
「なあ、あんた知ってたのか」
「何をです?」
「とぼけないでくれ。俺の同居人がオウジサマだったってことだよ」
「・・・・・・」
「いい加減にこのからくりを教えてくれないか」
「皇子はどこへ行かれました?」
「知るかよ!今朝になったら消えてたわ!」
「困りましたね・・・」
「ああ困ってるよ!だから電話してんの!」
「東雲さま、逆にお気づきになられませんか」
「はい?!」
「皇子が・・・どうして帰化したいのか本当の理由を」
「・・・え?」
「・・・いえ、戯れ言です、お忘れください」
急にぷつん、と電話が切れた。
・・・ふざけやがって!結局認めやがった!やっぱり史遠がオウジサマじゃねえかよ!
ああああああああああやっぱりそうなのおおお?
国に帰って結婚しちゃうの?
ヤらなきゃ良かったのかなあああああ?
・・・いや、違うでしょ、俺!
史遠は帰りたくないんだ。だから川崎たちに捕まらないために隠れていた。俺と同居していれば、そりゃああいつらには気づかれないって。盲点中の盲点だわ。
っつーか。
「はい、辺見」
「おいっ、いきなり切るんじゃねえ!」
「失礼しました、切れてしまいまして」
「切れて・・・じゃねえ、そんなことはどうでもいい!あんた、皇子の命令で動いているって言ったよな?」
「はい」
「っつーことは、あいつが俺に「オウジサマ探し」を依頼したってことか?」
「あいつ?」
「史遠だよ!神苑史遠!」
「・・・・・・皇子のお名前は、アルフォンス・ジェレマイア・リンドールです」
「はいはいわかった、そのアルフォート皇子が依頼したのかって聞いてるの!」
「皇子はチョコレート菓子ではありません」
「うるせええええっ」
「カミゾノシオン、という方はよく存じ上げませんが、皇子が私に依頼したのは確かです」
「俺がこの仕事をしていると知っててか・・・」
「皇子が何をどこまでご存知かは私にもわかりません。皇子の命令は「帰化の準備が出来るまでのリンドール第三皇子の捜索、及び保護」です」
「そんなん自分だって名乗りでりゃ一発だっただろうがよ!」
「決めたのは皇子の意志です。私にはどうすることも・・・」
「ややこしいな本当に!名乗り出ない理由はなんなんだよ?」
「・・・だから言ったではありませんか。お気づきになりませんか、と」
「・・・んん?」
「全く・・・どうして・・・のか」
「あん?なんだって?聞こえねえんだけどっ」
「・・・そろそろおわかりになってもよろしいかと思いますよ。よくよくお考えください。では」
「えっ、あっ、ちょっと!」
ぶつん、と再び電話が切れた。
ソロソロオワカリニナッテモヨロシイカトオモイマスヨ。
って何?
史遠がなぜ、自分の正体をわざわざ俺に暴かせようとしたのか。俺が気づいて、俺が史遠を保護することに何の意味がある?そもそもどうしても日本人になりたいのなら、どこぞの田舎とかに隠れて準備が整うまで待ってればいいのに、わざわざ東京で俺と同居して俺に探させる意味がわからん。
帰化。キカ。帰化したい本当の理由。
あれ・・・なんかどっかで聞いたことのある台詞。
・・・・・・・・・・・・あっ!
夢だ。オウジサマを追っかける夢!オウジサマが言ってた!で、振り返ったオウジサマの髪がふぁ〜って金髪から黒髪になって、史遠になったんだよなあ・・・あのとき、めちゃめちゃ切ない顔をして俺を見て・・・
あら?
史遠が皇族離脱をしてまで国に帰りたくない本当の理由って・・・・・
結婚が嫌だ、国に帰ったら継母にいじめられる・・・それが本当の理由じゃないとしたら。
リフレインする史遠の切ない声。
(俺も・・・好きだよ、国丸)
お・・・・・・俺えええええっ?!
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