18

2/2
前へ
/97ページ
次へ
「真北さん!」 馨が遭遇した厨房の他にも、施設のあらゆる場所で爆発が起きていた。 特別棟では講堂に爆発物が仕掛けられており、会議中だった蓮見と真北もその被害にあった。 「高月!無事か?!」 「俺はかすり傷です、真北さん、腕が・・・」 特別医務室の前にいた真北の剥き出しになった肩から右腕には、包帯が巻かれていた。顔にも小さな傷がいくつかある。 「俺も大したことはない。それより・・・」 真北は医務室のドアを見た。 馨は咄嗟にはすみさんは、と言い掛けて言葉を飲み込み、一呼吸おいて尋ねた。 「盟主も怪我を?」 「怪我はない、脳震とうだ。中で休まれている」 真北の話によると、蓮見が会議で座っていた場所のすぐ近くでまず小さな爆発があったらしい。蓮見はおかしな音がするのに気づいて立ち上がり、真北が調べようとしたところ、爆発があった。そして立て続けに大きな爆発が起こったというのだ。 「厨房の方はどうだった」 「調理していた何人かがひどい怪我をしています。あとは衛生部と、事務所がひどいそうです」 「そうか・・・死者は?」 「いまのところ報告はないそうです」 「・・・・・・弄ばれているな」 「どういうことですか」 真北は目線を泳がせた。そしてこっちで話す、と言って医務室のドアを開けた。 特別医務室はその名の通り、盟主専用の医療施設が整った部署だ。いざと言うときのために、医師と看護師が常勤し、手術設備も整っている。 真北が入ると、医師と看護師が揃って頭を下げた。奥に据えられたベッドには蓮見が横たわっている。意識はしっかりしているのか、視線だけでちらりと馨をみとめた。 医師たちは無言で部屋を出て行き、真北と馨、そして蓮見だけになった。 「座れ」 ベッドの横に丸椅子をふたつ並べ、馨は真北に促され腰を下ろした。 蓮見が身体を起こそうとするのを自然な動きで真北が支える。上半身を起こした蓮見は馨と目を合わせた。 「無事だったようだな」 蓮見の声はいくぶん力がなかった。脳震とうだけで済んだとはいえ、爆風にあおられればただではすまない。 「俺は平気です。盟主は起きて大丈夫なのですか」 「ああ、真北のおかげで気を失っただけで済んだ」 真北の腕の怪我は、蓮見を庇ったためだった。とっさの判断で蓮見に覆い被さり、爆発の炎から守ったという。 馨は真北を見たが、真北は表情を変えない。馨は側近ではないため、普段は蓮見のそばにいることが出来ない。敵である真北が蓮見の命を救った。馨は複雑な思いで視線を外した。 蓮見は言った。 「それで、今回の爆発だが、岬は今も特別室の中だ。奴があらかじめ準備していたということも無くもないが・・・どう思う」 「俺は違うと思います。他にも今回処分されたエイリアンが何名かいると聞いていますが」 「ああ、確か・・・」 蓮見が真北をちらりと見る。 「八名です」 馨は真北の返事にうなづき、蓮見に向き直った。 「その中の誰かが、ということは考えられませんか」 「・・・理由は?」 「岬くんを解放させたいのでは」 「いまのところそう言った要求はない。そもそもあと八名は皆、岬よりずっとグレアが弱い。リーダーを解放しろとか、そういった気概のある奴はいないようだが・・・」 蓮見は腕を組んだ。手首のあたりに擦り傷のようなものが出来ている。 真北が言った。 「高月の方で、何かわかったことは?」 馨は少し考え、こう答えた。 「・・・八人の中には入っていませんが、気になる人物がいます」
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

247人が本棚に入れています
本棚に追加