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「よし、消えた」  暗闇の中、関は低い声で言った。あらかじめ準備していた懐中電灯を取り出し、スイッチを入れる。その瞬間、関は自分の目の前に突きつけられた銃口に、動きを止めた。 「・・・おい、なんの真似だ」 「その首の傷は・・・どうされました?」 「タカツキ」 「答えてください。あなたは何者ですか」 「その銃に弾は入ってねえぞ。お前の手で確認しただろうが」 「ええ、わかってます。はったり、ですよね」 「ふざけてる時間はねえ」 「ふざけてなんかいませんよ。関さんも警察官だったんですからわかるでしょう。俺らがみんな持っている、直感ですよ」 「・・・お前の直感は、何だって言ってんだ?」 「あなたは危険だと」 「もちろん安全安心にはほど遠いがな」 「その傷がいつ出来たものか、教えてください」 「知ってどうする」 「ランドオブライトの一回目の爆発事故・・・あれに関わっていたのでは?」 「・・・俺は昔から、関係施設を追ってる。もしその事故に関わっていたとしても、なんの不思議もない」 「認めるんですね」  馨は銃口をさらに近づけ、関の目と目の間をぐっと押した。 「認めちゃいねえ。可能性の話をしただけだ」 「もしあの時関わっていたなら、もっと早く前嶋望未を止められていたのではないですか」 「そりゃあ買いかぶりだ。俺はその頃既に警察を辞めてる」 「それでも一人でここまで追い続けているあなたなら、なんらかのことは出来たはずだ」 「要するに何が言いたい」 「あなたは本当に・・・俺たちの味方ですか」 「・・・・・・」  関は馨を睨み上げ、額に当てられた銃口を力強く掴んで押し返した。 「敵だと思うなら、俺たちはここまでだな」 「・・・ええ」  二人は険しい顔でにらみ合ったまま、数秒が過ぎた。しかし関はいきなり頬を緩めると、ははは、と笑って見せた。 「・・・関さん?」 「さすがだな。見直したよ」 「誤魔化さないでください」 「わかったわかった、話すからこれをどけてくれ」  馨は関の目を見つめたまま、ゆっくりと銃口を降ろした。関は壁に背中を預け、こう切り出した。 「俺は確かに最初の爆発の時、ランドオブライトにいた」   関雅彦は、偽名を使ってランドオブライトに忍び込んだ。そのときも電気技師名義だったという。 「お抱えの電気会社に入り込んで一週間で、ランドオブライトの仕事が入った。言っておくが、何の小細工もしてねえぞ。運が良かったんだ」   それは爆発の当日だった。プレイルームの配電盤の調子が悪いという理由で関は呼ばれた。通常どおりの修理をしつつ、様子を伺うつもりだった。しかし。 「俺が担当した配電盤には何の異常もなかった。とりあえず通常通りの点検をしたが・・・急に電気系統全てがショートを起こしたんだ」  その直後爆発音が地下から響いて、訳がわからないうちに相次いで館内のあちこちが爆発を起こし、関もそのひとつに巻き込まれた。 「特に被害が大きかったのは地下のプレイルームだ。遺体が次から次へと運ばれてきたのを見た。・・・そこに、瀕死の望未がいた。顔半分が火傷でただれて、本人だと判明出来ないほどだった」 「望未を・・・見たんですか」 「ああ。でも俺も火傷を負っていて、行方を負うことは出来なかった」 「あの事故は望未が仕組んだことだったんじゃないんですか。金持ちによるSubのオークションの最中だったとか」  その爆発に巻き込まれ、黎が真北を守り生き残った、というのは真北本人から聞いた。プレイルームの生存者は黎、真北、望未、そして身分を偽るために生かされた「九坂知宏」の四人。では関はどこにいたのか。 「俺は部外者だったからな。望未が運ばれた病院とは別の病院に行くことになった。そこで・・・ある男と会った」 「ある男?」 「真北晴臣という。知ってるだろう?」 「!!」
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