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「真北さんを・・・知っているんですか」 「ああ。あいつに会って、おそらく俺と同じ人間だと直感した。やんごとない目的があるってな」  関は運ばれた病院で、ランドオブライトの関係者を探した。そしてある病室の前で、「真北晴臣」の名前を見つけた。   「俺が警察を首になって、俺の代わりに潜入捜査員となった警察官が、真北という名前だった」 「・・・潜入捜査員?真北さんは警察官では・・・」 「あいつの兄だ。真北聡介という」 「!」 「真北聡介が行方不明になり、黎が次の潜入捜査員になった。そしてその数年後、入ってきたのがタカツキ、お前ってことだ」  真北が兄の捜索のため、ランドオブライトに入ったことは聞いていた。が、まさか関と繋がっているとは。 「俺があいつと接触を持つと、兄の行方を探していると言った。俺は自分の身分を明かし、ランドオブライトの前身「光の環」の頃から潜り込んでいることを伝えた。それであいつと俺は、密かに協力関係を結んだんだ」 「じゃあ、前に言っていた関さんの仲間というのは、真北さんのことだったんですか」 「そうだ。あいつはあの「国」の中でめきめきと力を付け、トップの直前まで上り詰めた。それでもなかなか敵のしっぽを掴むことは難しかったみたいだがな」  馨にとって、関に対する疑念と真北が味方かどうかということは、イコールにならなかった。むしろ真北ですら、この関という男に取り込まれているのではないかと思えた。しかし、真北が兄のことを話しているということは、信用しているということ。 「真北さんのお兄さんは見つかったんですか」 「それは俺にもわからん。当然調べてみたが、どこから突っついてみても消息不明、ということしか出てこなかった」 「・・・・・・」 「俺は自分が外から調べる間、あいつに「国」の中から調べてもらうことにした。その頃ちょうど、黎が「盟主」に就任した」 「どうして黎さんにそのことを伝えなかったんですか」 「・・・俺は警察を追われた身だ。黎はくそ真面目な男だからな、どんなことでも俺から接触するべきじゃないと思った。ランドオブライトが崩壊したから、あらためて接触することにしたんだ」  ふと、馨ははじめて関と出会った時のことを思い出した。関は黎から、黎は関から連絡を貰った、と言っていた。よくよく考えれば、あの時に感じた違和感を突き詰めておけばよかったのかもしれない。 「タカツキ、もう一度言っておく。俺は前嶋望未をしとめるためだけにここにいる。黎やお前の敵じゃない。・・・真北と繋がっていたことを黙っていたのは・・・悪かったと思っているが」 「・・・・・・」 「お前は黎を助けだし、あいつを逮捕に持って行きたいんだろう。黎を助け出すまでは俺も協力するつもりだ」  馨はうなづいた。関は視線を床に落とし、声を低くして続けた。 「そして悪いが、そのあとは俺の自由にさせて貰うぞ。もし時点で俺が邪魔なら、お前の好きにすればいい」 「関さん・・・・・・」 「俺はこのためだけに生きてきた。罪に問われることよりも、目的を果たせないことの方が俺にとっちゃおおごとなんだ。・・・わかってくれ」 「・・・・・・」 「のちのち、この話を警察にしてくれてもかまわない。被疑者死亡で送検になっちまうかもしれんが」  関は、優しく笑った。裏のありそうないつもの含み笑いではなかった。どこまで信じていいのかはまだ不明だ。しかし今は黎を見つけださなくてはならない。馨は言った。 「・・・行きましょう。非常電源が付く前に黎さんを助け出したい」
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