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 館内に響きわたるサイレン。それは通常のサイレンではなかった。「最重要人物に関わる非常事態」を示し、短く何度も繰り返す。依然非常電源は作動しないが、サーチライトを持った警備員が走り回っていた。 「すごい人数ですね」 配電室を出た関と馨は廊下の角の壁に身を隠していた。 「停電どころじゃないことが起きてるな」 「この騒ぎに乗じて乗り込みましょう」 「待て・・・ちょっと様子がおかしいぞ」  関が言ったように、普段センター棟に向かって集結する警備員たちは、なぜかセンター棟を出て行こうと出口に向かっていた。 「どういうことですか」 「ここはこの施設の心臓部だ。ここを守るのが警備員の役目のはずだ・・・それが、外に向かっている・・・」 「もしかして黎さんが脱出したんじゃ・・・」 「・・・ここにいたのかどうかもわからんが・・・その可能性はあるな」 「行きましょう!」  関と馨は通路に飛び出し、走り出した。途中で出くわした警備員を躊躇せず殴り倒し、それぞれひとつずつサーチライトを手に入れた。懐中電灯の何倍も強い光で次々と警備員たちの目をくらませ、ふたりはセンター棟の出口手前までたどり着いた。  まだまだ警備員の数は多い。ここを抜けるには多勢に無勢すぎた。 「おい、タカツキ。お前の出番だぞ」 「え?」 「この人数は、お前の(グレア)じゃなきゃ乗りきれん」 「で・・・でも・・・」 「全力でやるなよ、殺したくはないだろ」 「コントロールする自身はありませんよ。本当にいいんですか」 「それしか方法はねえ」 「・・・わかりました」  馨はひとつ深呼吸した。そして湧き水のように次々現れる警備員たちの足音のする方に向き直った。  馨に気が付いた警備員の一人が、お前、どこの班だ、と言いながら近づいてきた。制服を来ていたのが功を奏した。馨は射程距離まで警備員を近づけてから、細い光線のように研ぎ澄ましたグレアをみぞおちに向かって発射した。警備員はまるでおもちゃのように二、三メートル先まで吹っ飛んだ。飛んできた男がごろごろっと転がり、遅れて駆けつけた警備員たちが、その男が泡を吹いているのを見てざわめいた。  馨は続けて、続々集まってくる男たちに向かって、今度はまとめてグレアを発した。おもしろいくらいにばったばったと倒れていく様に、陰から見ていた関は口笛を吹いた。 「関さん!行きますよ!」  しかし馨が振り返った瞬間見たものは、関の背後から数人の警備員が走ってくる光景だった。 「関さん!」  あっという間に関は羽交い締めにされた。駆け寄ろうとするより先に、馨の後ろからも新しく警備員の足音が近づいてくる。 「タカツキ、行け!俺は大丈夫だ!」 「関さん!」 「行け!」  逡巡している暇はなかった。馨は近づく警備員たちをグレアで吹っ飛ばしながら、センター棟の出口を強行突破した。
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