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   銃声が聞こえたのは、西棟の最上階、海を望める屋上だった。 「最上階には何があるんだ?」 「望未だけが使えるプライベートルームです。私も入ったことはありません」 「豪勢なことだな」 「全く・・・」  エレベーターはまだ動いていた。しかし途中で止まることを危惧して、階段で上がっていく。 「あの、さっきの女性ですが」  馨は階段をあがりながら尋ねた。 「弓衣、と言っていましたが、彼女は望未の・・・?」 「ああ、母親だ。だが前嶋裕との子ではないらしい」   「え・・・?」 「彼女が言うには、望まない妊娠だったというから・・・そう言うことだろう」 「それは、他の兄弟も?」 「皆、死んだそうだ。ひとりを除いて」 「ひとり?」 「話はそこまでしか聞いてないが・・・誰のことを言っているのかはわからないな」  黎と馨の会話を聞いていた晴臣が足を止め、数段上から振り向いた。 「・・・妙ですね」 「妙?」 「望未の兄たちで、生き残った人間がいるという情報はありませんでした。ですが弓衣さんが嘘を言ったとは思えませんし・・・」 「生きている兄はここにいないということか」 「では、どこに・・・?」 「関係者ではない、ということでしょうか?」  三人で顔を見合わせるも、答えは出ない。 「真北が調べて情報が出てこないということは、かなり巧妙に隠されてるってことだな」 「望未は兄のことを知っているんでしょうか?」  馨の問いかけに、晴臣が答える。 「彼の口から聞いたことはない。もし知っていたら・・・粛清されていてもおかしくない」 「粛清?!」 「彼は自分以外の血縁者を認めない。弓衣さんは特別だ」  晴臣の言葉に黎が悲しい顔をした。 「やはり母親なんだな」 「あんな様子でも、やはりそう思っているのでしょう」  歩き出そうとした晴臣が、ふと視線を上げ、何かを考えている。 「真北?」 「待っ・・・てください、何か・・・誰かにその話を聞いたような気が・・・」 「え?」  その時、階段のずっと上から、再び銃声が響いた。それも続けざまに三発。女性の悲鳴が混じって聞こえてくる。 「まずい、行くぞ!」 三人は走り出した。
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