最終章

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「それで?」 「関雅彦、前嶋弓衣は死亡。ほかに遺体は見つからず、蓮見黎と高坏馨は先日退院したとのことです」 「そう。他には?」 「白骨化した男性の遺体が、山中から見つかったそうです」 「真北聡介か」 「おそらくは」 「じゃあ一段落ってこと?」 「左様でございます」 「ずいぶん長引いたなあ・・・こんな大事になるとはね」 「あの高坏という男が元凶でしょう。あの男が絡まなければ、もっと早く片づいていたかと思われます」 「グレアがやたらと強いっていうのもやっかいなことだ。有効な使い方を知らない輩は、正義感ばかり強くて何の役にも立たない。・・・まあ、おかげで僕が直接手を下さなくても前嶋家を潰すことが出来たわけだから?感謝すべきなのかな?」 「お心が広い・・・その気になればいつだって潰せたのではありませんか?」 「まあ、そうだけどね。僕も焼きが回ったかな」 「いずれにしても無事に片づいてようございました。イタリアで少し羽を伸ばされてはいかがでしょう」 「そうするよ、って言いたいところだけど、どうせ仕事もあるんじゃないの?」  空港VIPラウンジの電光掲示板では、ローマへの直行便が定時で離陸すると示されていた。 「さすがでございます。久しぶりの講演会を、皆楽しみに待っております、盟主」  盟主、と呼ばれた男は、ふっと頬を緩めて片手をぱたぱたと上下に振った。 「やめてよ、その呼ばれ方、慣れてなくてなんだかくすぐったい。いつも通りでいいよ」 「かしこまりました。ではそろそろ搭乗のお時間です、灯馬さま」  飲みかけのワインを一気に煽った岬灯馬は、優雅な素振りで立ち上がった。そしてかしづく男にジャケットを着せられ、ゆっくりと搭乗口に向かった。  そして「エイリアン」の物語は繰り返す。         完
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