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「キャサリン……」
ジョセフはつぶやいたが、女の子には、聞こえていなかった。
まさにその、初恋の相手、キャサリンにそっくりの女の子が、玄関に立っていたのだ。
「いや、そんなはずはない。他人の空似だ。」
「え、おじいさん、どうかしましたか?」
女の子は、不思議そうにジョセフの顔を覗き込んだ。
「いや、なんでもない。ちょっと、待ってて、今、美味しいお菓子を持ってきてあげよう。」
ジョセフの心臓の高なりは一向に落ち着かなかった。久しぶりに来てくれた女の子の訪問は嬉しかったが、どこからどう見ても、キャサリンにしか見えない。
ひょっとしたら、キャサリンの孫ではないのか? そんなことが頭に浮かぶ。
家にあげて、話を聞こうかとも思った。しかし、それでは、一歩間違えれば犯罪者になってしまうと諦めた。
「お嬢さん、ほら、お菓子だよ。どうぞ。」
そう言ってお菓子を渡す間も、じっと女の子の顔を眺めていた。
「ジョセフ、ジョセフだよね? ジョセフなのよね。気づかないの?」
「へっ?」
素っ頓狂な声が漏れる。
「何よ、気づくと思って、見ず知らずの子供のフリをしてたのに。
私よ、キャサリンよ。独身を通してるって聞いたけど、私のこと、今でもスキでいてくれた?」
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