魔法使いになった幼なじみ

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 ジョセフは、狐につままれたような顔をして言葉が出なかった。  初恋の相手が忘れられずに独身を通した可哀想な老人がいるとでも、どこかで、聞いたのであろうか。    老人をこんな小さな子が揶揄うと言うのはあまり良いことではないとジョセフは、説教をしようとした。  しかし、その言葉は、少女の言葉で遮られた。 「丘の上の約束、忘れてないよね。上がるよ。」  キャサリンは、玄関に箒を置き、一歩前に出たが、ジョセフは、立ち尽くしていた。 「いつまで、レディをこんなところに立たせたままにする気?」  キャサリンは、腰の両側に手のひらをつけ、足を広げて不服そうに立っていた。 「すまん、すまん。こちらへ。」  居間へと先導するジョセフは、チラチラと、キャサリンを見る。肩で風をきって歩く威勢の良さに、笑みを浮かべる。  ジョセフが居間でソファに座るよう勧めると、キャサリンは部屋を見渡した。 「なかなか、いい暮らしをしているのね。」 「ああ、そう見えるかな。」
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