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「私ね、見ての通り、やっとで一人前の魔法使いになれたの。
あ、若返りの魔法で、こんな姿になってるけどね。
さっきの話だけど、私のこと、今でも好き? ずっと、独身を通したのは、私と結婚するため?」
少女の射抜くような視線が、老人に刺さる。
「ああ、まさか、本当に魔法使いになるとは思わなかった。
そうじゃよ。キャサリンのことが忘れられずに、他の女性との結婚は考えられなかったんじゃ。」
そう、ジョセフが笑顔で言う。ジョセフは、キャサリンから優しいまなざしを離さない。
「そう、今まで、現れなかった私のことを恨んでる?」
さっきまで、男勝りな喋り方をしていたキャサリンは、少し、涙目になり、天井を見ながら、そう言った。
「いや、一度も恨んだことはない。待っていたのは、わしの勝手じゃ。お前さんに罪はない。」
「大事なことがあるんだけど……」
キャサリンは、ジョセフの目を見つめていた。キャサリンの瞳から両頬に涙が流れている。
「私の若返りの魔法は、もうすぐ切れて、しわくちゃの80歳のおばあちゃんになるの。そして、2度と魔法は使えなくなる。その姿を見たい? 見たくなければ、私、もう帰るよ。」
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