魔法使いになった幼なじみ

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 キャサリンは、涙声になっていた。涙は頬をつたい、顎から下にポツポツとしずくになって落ちていた。 「ああ、会いたいな。しわくちゃジジイのわしを見られたんじゃから、しわくちゃ婆さんになったキャサリンを見ても、なんのショックもない。」 ジョセフの目にも涙が溜まっていた。 「あと、一つ、言っておくことがある。 私、一度結婚してたの。親が決めた結婚で、すぐ夫は病死して、今は一人だけど、あなたを裏切った。それでも会いたい? 会ってどうしたい?」 「これからの人生、一緒に過ごすことはできんかの? いや、まずは、友達から始めるのが、いいのかの?」  キャサリンは、泣きながら、首を縦に振っていた。 「わかった。わかったよ……  聞いた? 聞こえてるよね。あとは、お願い。」 「あとは、お願いって、なんのことじゃ?」  ジョセフは、首をかしげた。 ピンポーン 「すまんの。来客じゃ。ちょっと待っていてくれ。」 そう言うと、ジョセフは、玄関へと急いだ。なぜか、後にキャサリンがついてくる。  玄関を開けると、80歳くらいのおばあさんが立っていた。 「ごめんなさい。ずるい手を使って。私が、本当のキャサリン。色々と確かめてからじゃないと会う勇気がなくて。その子は、私の孫なの。」  ジョセフが女の子に視線を移動するとキャサリンと名乗った女の子は、ワンピースの襟についたマイクをジョセフに見せた。 「キャサリン!」  しばらく、玄関に立つおばあさんを見つめていたジョセフは、ゆっくりと彼女を抱きしめた。 「夢じゃないんだな?」 「ずっと、会いたかった。会いたかったけど会う勇気がなかった。魔法使いになる方法をずっと探していた。  でも、見つけられずにこの歳になった。約束、守れずにごめんね。」 了
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