友達だった彼。

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それから数年後、華蕾達は高校生になった。 「華蕾先輩、そこ間違ってます」 「あ、ごめんね沙織ちゃん。教えてくれてありがとう」 「華蕾ー、出席表に名前書き忘れてる」 「嘘! 今行く!」 テスト勉強用のノートを閉じ、先輩の元へ急いで向かうと椅子の足に引っかかって盛大に転んだ。 「いたた……」 「先輩、可愛い」 「ドジ天然子、萌えるわ」 「し、心配くらいしてよー!」 あはは、とその場は笑い声に包み込まれる。華蕾は折れて埃がついたスカートを払い、文芸部の出席表に丸を振った。 子供の頃と違い、人望に恵まれた華蕾は学年関係なく友達ができた。未だとろくさいのは変わりないが、クラスで「亀」と馬鹿にしてくる生徒もいない。楽しい高校生活を送っていた。 今日は部活内で勉強会。週に二回顔を出せば喜ばれる文芸部だけど穏やかな空気感が好きで毎日来ている。 丸を振り、席へ着こうとするとまた転ける。華蕾のとろくささは『ドジっ子』だと評され、結論を出す過程が遅くても『天然でアホ可愛い』と可愛がられていた。 (皆の評価はわかんないけど、年齢も重ねて場所も変わったらよくなるもんだな) 打った膝を擦りながら座り直し、勉強再開。 「華蕾〜、お客さん来てるよ」 「お客さん?」 入部希望の子かな、と疑うことなく部室を出たら見知った顔がいた。 「……か……、鷲宮(わしみや)君?」 和葉と言いそうになり言い直す。 「ちょっと時間いいか」 背は伸び、喉仏も浮き彫りになった青年はあの頃の面影をあまり残していない。 どうしてここへ来たのか理解不能だったが、部長や他の皆に「行っておいで」と勝手に見送られてしまって渋々和葉の後ろをついていった。
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