ルージュ

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ルージュ

※前田と女のいちゃいちゃ短編です。 男の赤は 薔薇の赤 女の赤は 口紅の赤 赤い薔薇はアタシの胸に 口紅はアタシの唇に 【ルージュ】 アタシの細い顎に、女のしっとりとした指がかかる。 「少し、上を向いて」 悪戯そうな女の目がアタシを見る。 「アンタ、アタシに命令するの?」 「今だけくらい、いいじゃない。」 「そうね、素直に聞いてあげるわ。」 アタシは笑って少し上を向いた。女とアタシは小さなテーブルを挟んで座っている。 女に奪われたアタシの顎、ねっとりとしたラードみたいな物が唇に触れた。 「前田さんは、少し暗い赤が似合うわ。ベージュが入ったような」 ねと、ねと、唇が気持ち悪い。だけど唇が色づいていくのは嫌いじゃないから我慢よ。我慢。 「そう?この前のピンクも嫌いじゃないけど」 「あれは駄目。だって可愛過ぎるじゃない。グロスも駄目よ」 「あら、年を取ったら駄目なものが多くなるのね」 「あなた自体に華があるから派手な色はいらないの」 「残念ね」 「そうかしら」 きゅっ、と女は最後の仕上げを終えてにっこりと笑った。 手鏡を差し出しながら 可愛いわって笑う。 アタシの唇に赤い薔薇が塗られてる。 たまにやる遊びよ。 女はアタシに化粧をしたがる。でもさすがにそれは嫌だから、口紅だけにしてもらうの。 アタシは可愛い物が好き。アタシは綺麗な物が好き。 だから恥ずかしいとは思わない。自分が美しいと思える瞬間よ。 女ってずるいわ。 アタシだってもう二十位若ければ、アンタより可愛い筈。 クフン、と鼻を鳴らしてアタシは女を見る。 「どうかしら」 「素敵よ」 「じゃあ、分けてあげましょうか」 「お願い」 そしてアタシ達はキスするのよ。 それからお互いの唇に色づいた赤を誉めあうの。 「あんたも、似合うわ」 「ありがとう」 ロマンティックな事も好きなの。夢がないとつまらないでしょ? アタシは そういう男よ ゲスな野郎は お呼びじゃないわ 男の赤は 薔薇の赤 女の赤は 口紅の赤 赤い薔薇はアタシの胸に 口紅はアタシの唇に 【ルージュ】完
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