俺を殺して

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俺を殺して

【俺を殺して】 ニチャニチャと響く水音、今日はちょっと多いんじゃありませんか、興奮しているんですかとつまらない いぢわるを言う男。猫みたいにちょっと内股で、床に四つ足で待ち構えている俺のケツの穴に話しかけた。左手は俺の息子に右手は俺のアナに。 顔はいいが、テクはいまいちだと思う。無駄に愛撫する所も、グチグチとねちっこく掻きまわす指も、全くいいスポットにかすりもしない。がっかりだ。やはり妥協は良くない、と思う。 好みではなかったが、なんとなく都合がいいので二、三回寝てはみたが、ちっともこいつは俺の良い所も性癖も覚えない。こいつはカスだ。 「興奮…はまだ来ない、な」 「強がりを言って」 「俺をよがらせろ」 こんな前戯じゃ濡れないぜ、ああ、お前は小さいから濡らさなくてもすぐに入るさと笑った瞬間に指が抜かれた。 「足りないか、仕方がない」 「なに、」 振り向こうとした瞬間、俺は久しぶりに悲鳴を上げた。もちろん小さな悲鳴だが。ズン、と穴に衝撃がくる。余り慣らされていない場所がミシリと叫んだ 「あ…くそ、お前」 「まだ、まだだ、我慢して下さいよ」 俺は呻いた。ついつい不覚にも逃げ腰になる。 眉をしかめながら、その物体を締め付けて感触を確かめた。 「緩んだ穴に、バイブはいい栓でしょう」 「好きじゃないんだ、生がいいんだよ」 気持ちよければなんだっていいんだろう、そうグリグリと揺らす男の性根にうんざりした。 男ってもんは、(もちろん俺も男だが)穴を埋めたがる。だが、穴は塞がればなんでもいいってもんじゃない。 「やめろ、萎える、抜け」 「また、なにを」 俺がふざけてやめろと言っているのだと勘違いした男は、スイッチを押した。 「っ…!」 俺は眉間に皺がよる。 震える喉から甘い声が出る。 「ほら、貴方の体は嫌だとは言ってないでしょう?素直になってくださいよ」 そう言いながら擦り寄ってくる男の顔を俺は殴ってやった。 そいつの綺麗な顔をケツにバイブを突き刺したままで、殴ってやった。 「素直に、なったさ。」 殴られた男はもう、うん、とも、すん、とも言わない。 俺は力んだ。ケツの穴に力を入れて、バイブを排泄した。 ドロリとした液体と、プラスチックの物体が床に落ちる。 俺はSEXが好きだ。 それは生だから好きな事であって、人間に抱かれる事が面白いから好きなんだと思う。 オモチャでやるんだったら、自分でやる。 阿保なんじゃないのか。どうして人間がいるのにプラスチックでよがらねばならないのだ。 ノビている男に俺は笑ってやった。 「遊びで生きてるんじゃないんだよ。悪いな」 遊びって奴は嫌いだ。人生の無駄だ。何事も真剣に一発勝負が好きなんだとうそぶきながら俺は服を着替えた。 相手には不自由はしないし下らない事に時間をかける暇はない。 (やっぱり二十代前半の可愛い子がいいな。自分が醜い心を持っていると知らずに男に媚びるような子がいい。男が自分の自由になると思うようなガキが一番始末におえん。もっと、ウブな子を調教しよう。うん、と最初は甘えさせて、お姫様扱いさせてから、俺は奴隷になりたい。ああ、俺ときたらとんでもないド変態だ) 俺は服を服を着ながらも、妄想に少し硬くなった下半身の気配を感じて苦笑した。 それは何故かは知らないが、生まれた時からそうだった。 生き急いでいるような、何かに急かされているような 無茶をしたいんだ 痛めつけられて、喜ぶ俺 無茶をしてどきどきする俺 それは多分 そこに何かがあるかを何故か解っているからだろう 無茶な事をしたいんだ それで笑っていたいんだ 限界は知らん 絶頂を俺にくれ 死ぬかもしれないと 声が震えるようなスリルをくれよ そしてそのまま殺してくれたら最高だ ああなんてmasochist 性分だから仕方がないが。 【俺を殺して】完
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