【最終章】暗冥の郷・漆

8/18
61人が本棚に入れています
本棚に追加
/190ページ
◆ ◆ ◆ 「桃様、本当にこれで宜しいんですか?」 「あぁ、これで良い。」 私にとって太は兄というよりも村人の一員だった。変な情が湧くよりは、距離を保ったままの方がお互いのためだ。 「月に赤みが帯びているなんて、ここではではないでしょうか。」 「そうだな。これは、まだ何かあるのかもしれん。」 普段ここから見られる月は黄色を帯びた満月だ。その月が地獄へ行く者への最期の(はなむけ)となる。 赤みを帯びた満月を見るのは魅颯湖村が壊滅し、村人達を見送った以来だった。 「まだ、何か起こるかもしれないな。」 ◆ ◆ ◆ 「桃華ぁ〜!!桃華ぁ〜!!ちょっと聞いておくれよぉ〜!!」 何なら慌てながら走ってくる君与だ。その顔は顔面蒼白であるが、どこか嬉しそうな雰囲気も読み取れた。 「君与、どうしたの?」 「どうもこうもないよ。これ見てくれよ。」 君与から差し出されたのは真っ黒な封筒だった。 「これ、これ読んで!私はどうしたら……」 君与は泣き崩れてしまった。 君与から差し出された封筒を開封し、中に入っていた手紙を広げ、目をお通した私は驚愕したが、表情に出さないように優しく君与に声を掛けた。 「私達に遠慮することはないわ。良かったじゃない。あなた達二人だけでも通知が来ただけ嬉しいわ。」 「でも…………桃華はそれでいいの?私達の目的は?」
/190ページ

最初のコメントを投稿しよう!