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面識もない相手から届いた手紙。しかもそれが招待状とあっては、より不可解と言うしかない。
しかし、不可解は不可解だが、まさかこれがとんでもない事件を呼ぶとは、この時は微塵も思えなかったのも全く以て不思議ではないことだった。
「誰、これ?」
自分の名前が書かれているので、間違って配達されたものではないと解る。綺麗な白色の厚紙の封筒には、流麗な文字で自分の名前が記されている。
結婚式の招待状を思い浮かべるようなものだった。が、裏書の名前に心当たりはない。どうやら友人が結婚するのではないらしい。では誰だ、と椎名千春は封筒を片手に首を傾げた。
手紙を受け取った場所は殺風景な大学の研究室の中。そう、招待状は大学に送られてきていた。
つまり学会の案内ならばまだしも、こんな大仰な封筒を受け取るような場所ではない。ちなみに千春は、そんな研究室で人工知能を研究する学者だ。一応、身分は准教授になる。しかし、本人が准教授であることを自覚しているかは甚だ謎だというのが周囲の評価だ。
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