椎名千春の災難~人工知能は悪意を生む!?~

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 証拠はそれではないのかと、今度は千春が驚くことになった。 「お前な。自分の身長を考えろよ。百八十もある大男が、高さが一メートルあるとはいえ、天井を這いずり回れると思うか」 「ああ」  そう言えばそうかと、千春は友也が自分と同じくらいの身長だったことを思い出す。しかも天井に通じる穴はそれほど大きくなかった。あそこから入って天井を通り抜け、さらに美紅の死体を引き上げるなんてことが出来るはずない。 「田辺が天井を通って向こう側に行き、安全を確認して安達に連絡。安達は渡り廊下を通って普通に向こう側に渡ったっていうのが真相だ。水の音に驚いて、動物は逃げた後だったらしい。さすがに一人で天井に死体を隠すのは無理だからな。そこを手伝ったことは間違いない」 「そうか」  事件の中心は完全に田辺に移動したわけかと、千春は納得できた。だからこそ、友也は親子関係をはっきりさせたくないのかもしれない。案外、罪を被ってやるつもりはないらしいなと思わず苦笑してしまう。それが最も友也らしく思えた。
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