椎名千春の災難~人工知能は悪意を生む!?~

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 そう、友也はこの事件が起こる可能性を予測できなかったはずだ。いくら桃花が腹違いの妹とはいえ、安西を好きになっているなんて知る由もなかった。あの家を設計した時、いつか殺してやると思っていたのかもしれないが、あのタイミングではなかったはずだ。 「こんなややこしい事件は二度とごめんだな。そう簡単には起こらない事件だろうが、どう説明してもすっきりしないし、ややこしくて敵わん」  犯人も逮捕され、あらかた事件の様相も解ったというのに、喉に魚の小骨が刺さったような気持ち悪さが残ってしまう。それに、将平は顔を顰めて困ったもんだとぼやいているのだ。動機というのは、後付けであっても事件をはっきりさせるためにある。それなのに、今回はどう説明されてもはっきりしない。 「人間の感情なんて、そんなもんだ。そこから起こされる行動も、割り切れるものではない」 「おいおい。お前の研究に関わることだろ。そんな奴がそうやって割り切っていいのか」 「人間の感情の総てを理解する必要はないんでね」  呆れる将平に、千春はふんっと鼻を鳴らして言い切った。その開き直りとも取れる発言に、いいのかと翔馬と英士を見てしまう。
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