椎名千春の災難~人工知能は悪意を生む!?~

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 千春の言葉に、馬鹿馬鹿しいと将平は立ち上がった。どいつもこいつも、曖昧で気にならないのか。そんな気持ちだけが残る。が、自分だって刑事だから解っている。後から語られる解りやすい動機なんて、それこそ後付けなのだ。その時のそいつの心理を反映しているかどうか怪しいものだということだろう。 「さあ、煩いのも帰ったことだし、研究に専念だ。もう嫌がらせの手紙も届かないだろうし」  英士がそう言うと、千春と翔馬の顔が微妙になった。えっ、まだ来ているのかと英士の目が丸くなる。 「ええ。カレーせんべいは別だったんです。ほら、宛名は一部が手書きで他は印刷されたラベルだったじゃないですか。で、今日ですね」  届きましたと、翔馬はビニール袋に入れた手紙を差し出した。そこには油に濡れて変色した茶封筒があった。 「はあ。世間にはしっかり勘違いして、そしてこんな暇な悪戯をする奴がいるってことだな」 「まあ、いいんじゃないか。人工知能そのものが反発を食いやすいんだ。そのくらいの悪戯なら許容するしかない」 「こっちが大人になるしかないってことな。まったく、研究者ってのものんびりしていられない時代なのかね」
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