夕暮れキンダーガーデン

2/16
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
思ったより冷静、か。 下足場で靴をはきかえながら、環の言葉を反芻する。 そうかもしれない。 もちろん心配してないわけではないけれど、母親の入院も弟に早産の危機があることも、いまいちピンと来ていないのは事実だ。 私がまだ高校生で出産の実感がないから? それとも…… あの人が本当の母親ならもっと心配だったのだろうか。 うちは四人家族。再来月に弟が産まれて五人になる予定だ。 父と母、妹の(ゆき)。 だけど私と母は血が繋がっていない。 私を産んだ実の母親は、産後すぐに亡くなった。あまり丈夫な人ではなかったらしい。 父は男手ひとつで私を育てていたが、私が10才のときに再婚した。 新しい母は、さっぱりした面倒見のいい人。私に対しても普段は優しく必要な時は厳しくと、たぶん本当の母のように接してくれている。 4年前に産まれた、いわゆる母親違いの妹の雪とも仲良くやっているし、可愛く思っている。 でも、なぜだろう。 ときどき妙に苦しい。 母も妹も嫌いではないのに、むしろ好きなのに。 胸の奥がぽっかり空になったような虚しさを感じるのだ。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!