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「ただあの日、捜査協力を求められる前に、俺は尋常では無く嫌な予感がした。お前を失う予感だ。それまで色褪せていた俺の世界に、初めて激震が走った。それも、嫌な意味合いで、な。もう、全てを悟った時、俺はお前の傍に居るべきでは無いと思った」
「駿河……」
「でもな、お前は俺をまた探してくれた。事件が理由で全てを健忘していて、そうである事すら自覚できないような状態だったのに、俺の事を求めてくれた。それを知ったら、やっぱり無理だとここでも気付かせられた。秋保から離れるなんて無理だ」
駿河の手に力がこもった。俺は俯く。
「――俺と駿河は、二年前に出会ったんじゃないのか」
「ああ、違う。俺達は、再会したんだ」
「……」
「俺は二度と、秋保を危険な目に遭わせたりはしない。だから、推理なんかどうでも良いんだ。俺はお前が大切なんだよ」
急に思い出した事件の悲惨な記憶と、優しい駿河の声が、俺の三半規管を麻痺させていく。なんだか胸が辛くて、俺は震える手を、駿河の背中に回した。
「でも、俺はお前の活躍が見たい……いい。危険な目に遭っても良い」
「ダメだ。お前が居なければ、俺は生きていけない」
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