一巻の終わりのその前に

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「そんな探偵はいない。無論、俺もきちんと、お前を幼少時に見つけ出してもらった。だから今の俺がある。だが当時はそんな自覚は無かった。ただ自分が天才なのだとしか感じていなかった。だから俺の助手をするために、知識を身に付けたいからと、推理小説家に弟子入りするとお前が言い出した時も、どうでも良いと思っていた」  気付くと俺は震えていて、駿河はそんな俺を抱き寄せた。 「俺はバカだったよ。推理小説家にお前が殺されかけたと知った時、それに漸く気付いた。奴の動機は、俺を煽る事だった。俺に勝つ事だった。その為だけに、お前を殺そうとした。無論、自分の作品に現実の狂気のリアルを取り入れたいという動機もあったからこそ、お前以外も殺めたんだろうが――お前が狙われたのは俺のせいだ。だから俺は、お前との関係を協会に交渉して解消した」  俺は素直に駿河の腕の中に収まった。俺の髪を撫でる駿河の手つきが優しい。 「そして事件を解決した。海東も皆方も、お前の事は一被害者としては知ってる」 「……」
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