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いつもだったら、生活費について軽口を俺は叩く。でも、今はそんな気にはなれなかった。その時、駿河が俺の顎の下に指で触れ、俺の顔を持ち上げた。
「好きだ、秋保。言ってなかったな」
「……思い出した限り、俺の童貞にはきちんと理由があったから、お前の推理はハズれてた」
「――へ?」
「俺の方こそ、俺こそ、駿河の事を出会った時から好きだったから、だから、そういうのに興味が無かったんだ」
「お前、女が好きって……」
「忘れてたんだよ、恋心も」
俺が苦笑した直後、目を見開いてから、不意に激しく駿河が俺の唇を貪った。
その感触が、決して嫌では無い。
そのまま、俺は寝台の上に、駿河に押し倒された。
見上げると、俺の右手首に駿河が触れた。
「今でも痛むんだろう?」
「ああ……でも、俺、痛くなる理由まで忘れてた。まさか、右手の指、切り落とされる所で……そこに駿河が来て助けてくれたんだったなんてな……」
「俺が忘れさせてやりたい」
「ン」
再び唇を塞がれる。濃厚なキスにクラクラしていると、その口付けが終わった時、どこか焦燥感に駆られるような瞳で、駿河が俺を見た。
「抱いても良いか?」
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