一巻の終わりのその前に

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「こんな簡単な、ロジックですらないトリックですらない、ただの知見の一つを、ドヤ顔で推理する連中を見るより、もっと俺と部屋で過ごさないか?」  俺は赤面しつつ、駿河を軽く睨んだ。 「もうトリックが分かってるんなら教えてくれ」 「――エイムズの部屋。図で見せた方が分かりやすいな。心理学の錯視の実験の一つだ。魔術があるかは知らないが、これは少なくとも魔術じゃない」  ふぅんと頷きつつ、俺は少し考えてから首を振った。 「知識がどれだけ誰にあるか知るのも楽しいからここに居る」 「……ほう」 「代わりに……島から戻ったら、一緒に過ごそう」 「――へ?」 「今度、恋人っていう俺がいるのに、他の誰かを俺の事務所――であろうがどこであろうが、どこかに連れ込んだら許さないからな。もし俺がそれを目視でもした日には、一巻の終わりだと覚悟しろ」  笑顔で俺が宣言すると――駿河が嬉しそうな顔をした。  俺と駿河が婚姻届けを提出するまで、あと少し。駿河が捜査協力を再開したのもこの直後だ。性的に奔放だったのも、嘘のように変化したが……代わりに俺は抱き潰される毎日だ。ただ、それらはまた別のお話だ。     (終)
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