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111.お魚さん、池を気に入ってくれるかな
茶色い熊さんが汚れちゃうので、違う服に着替えた。飾りの少ないシャツと、お膝の辺りまでのズボンだよ。ズボンは紺色で、シャツは薄い水色だった。それから首にふわふわのピンクの布を巻く。
「カッコいいぞ、カリス」
「ほんと? 僕、かっこいい?」
本当だと頷いたパパと一緒にお庭に戻り、用意された粘土を覗き込んだ。灰色みたいな色で、これを隙間に詰めるんだって。最初にマルバスが見本を見せてくれた。手の中で捏ねてから、石の間に挟む。それから密着させて、外と中を平らになるように粘土を入れた。凄い、隙間が消えたよ。
「これでわかりますか? 石の間に詰めるのは大人がやりますから、カリス様は中の隙間を詰めてください」
「外はどうするの?」
「俺がやろう」
パパが外をやるから、僕と石を挟んで向かい合った。しゃがむとパパがちょっとしか見えない。でも粘土を取るために立つと、僕の方が高くなるんだよ。粘土は思ったより固くて、ぐいぐいと中に入れる。
「詰め込み過ぎてもはみ出すので、このくらいがいいです」
量の調整は、プルソンが手伝ってくれる。安心して詰めていく。僕の手は小さいから、隙間に詰めるのも上手だと褒められた。パパは上手にできてるかな。
石によじ登って確認すると、パパが笑いながら抱き上げた。僕の服が汚れたけど、パパも汚れてるしいいよね。二人とも灰色がいっぱいだよ。顔は触らないようにしながら、パパと粘土を確認する。僕のところは指の跡があるけど、外側はすべすべだった。
「すべすべはどうやるの?」
「これで擦ってごらん」
パパが板でやってみせた方法を覚えて、僕も板で表面を撫でる。あまり変化がないから、体重をかけて押してみた。平らになってる! にこにこしながら終わった場所も平らにした。お魚が泳いでてぶつかると痛いから、平らがいいと思う。
ぐるりと一周して、今度は上の段を始めた。ここはしゃがまないで、立って作業できるよ。アガレスが粘土を平らにして置いた上に、マルバスとアモンが石を並べる。ぐりぐりと揺らして石の位置を決めるまで、僕はプルソンと手を繋いで離れていた。
石を置いたら、僕が中から粘土を詰める。外から詰めるパパと競争だよ。平らにして覗くと、パパが「カリスは上手だな」と笑った。また一周して、すごく手が疲れた。あと足も疲れてるけど……池ができたのを見て嬉しくなる。ここにお水が入って、いっぱいお魚が泳ぐんだよね。新しいお家、気に入ってくれるといいな。
「あれ?」
ぐるりと見回して気づいた。僕の頭の高さまで、全部の方向が塞がってるよ。僕とプルソンはどこから出るの?
「カリスはこっちだ」
パパが石の向こうから腕を伸ばして、僕を抱っこした。プルソンも抱っこで外へ出るのかと思ったけど、自分で乗り越えてる。蹄のある人達は、このくらいの高さ平気と聞いて驚いた。僕も蹄があれば、飛び越せるのかな。首を傾げたけど、蹄は生えてこないので諦めた。
「カリスはこのままがいいぞ」
「うん」
パパがそういうなら、僕は蹄がなくてもいいよ。でもツノと翼は欲しいな。パパとお揃いがいいんだ。
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