116.残業は夜中にこなす主義でした

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116.残業は夜中にこなす主義でした

 アガレスとアモンがお出掛けしてから、今日で6日目。僕は5より大きな数字を数えられるから、ちゃんと分かるよ。本当はね、忘れないように絵の裏に書いておいたの。  赤い顔の絵は、帰ってきた二人に渡すつもり。ちゃんと名前も書いた。プルソンが確認したけど、文字も全部合ってたよ。明日は帰ってくるかな?  マルバスは仕事の量が増えて、毎日忙しそう。お茶の時間も、書類を読みながら飲んでた。パパはそんなことなくて、僕を膝に乗せて一緒にお茶を飲んで、お菓子を食べさせ合う。仲良しでいられて嬉しい。 「マルバス、行儀が悪いぞ」 「陛下と違って、夜中に……むぐぅ、うぐぐ」  夜中に何かしたの? 続きを待ってるのに、パパが次々とマルバスの口にお菓子を入れる。食べ終えてないのに、また新しい焼き菓子を突っ込んだ。苦しそう。 「こいつはこの菓子が大好物でな、たくさん食べさせてやろう」 「わかった! 僕も分けてあげる」  あーんと言いながら、口の隙間にお菓子を入れた。涙を流して喜ぶマルバスだけど、やっぱり苦しそうだから1枚で終わりね。僕はその後もパパとお菓子を半分こしながらお茶を楽しんだ。いつの間にかマルバスは黙ってお茶を啜ってて、話しかけても「あ、はい」しか言わなかった。 「パパ、マルバスはどうしたの?」 「カリスがあーんをしてくれたから、感激したんだろう。余韻という考え方があってな。あれはよかったと思い出しながらうっとりしているんだ。そうだな?」 「あ、はい」  へぇ、僕がパパにあーんしてもらって感動した時のことを思い出すと、余韻なんだね。 「ちょっと違うか。すぐ前に起きたことが終わったのに、まだ続いているみたいな状態だな」  難しい言葉みたい。でも覚えておこう。余韻、使えると大人に近づく気がする。ぐっと拳を握って言葉を覚えた。 「カリス様、お願いがあります」 「なに?」 「今日は一晩中、陛下を離さないでください。ぎゅっと抱き締めて朝までです」  いつもは僕が抱っこされてるけど、僕がパパをぎゅっとすればいいの? 朝まで……腕を掴んでれば大丈夫かな。 「わかった」 「っ! マルバス!!」 「……僕の苦労を理解していただきましょうか、陛下」  にやりと笑ったマルバスは元気になったのかな。僕の約束が役に立ってよかった。パパをぎゅっとして離さない方法……うーんと、腕に僕がしがみ付いたら離れないと思う。あれこれと方法を思い浮かべている間に、パパとマルバスは仲直りしたみたい。 「明日、後悔するといいですよ。陛下」 「完璧にこなして、鼻を明かしてやる」  パパとマルバスもお約束したんだね。なんだか僕より仲良しだと寂しいな。唇を尖らせた僕にパパが慌ててキスをくれて、頬と額の二か所だった。いつもよりいっぱいもらったキスが、僕を好きだって言ってるみたいで。すごく嬉しかった。  夜、ちゃんとパパの腕を抱っこして寝たよ。朝になるまで離さなかったの。縫いぐるみは横に置いてたけど、なぜかいっぱい書類があってびっくりした。隣の部屋から強い風が吹いたのかな?
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