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119.お魚がたくさん! 僕を見てるね
虹のお魚はすぐに移動となった。ミカエルがいなくても、パパがお魚を運べるの。水ごと池まで持っていって、中に落とした。水が溢れそうになったけど、マルバスが水を減らしてくれたの。
お魚さん達、外に落ちなくてよかった。パパに抱っこされて覗いた池で、虹色のお魚は元気に泳ぐ。広くなったから、気持ちよさそう。
「パパ、僕も泳ぎたい」
「ここは魚用の池だから、今日は諦めよう」
「……うん」
そうだね。いきなり僕が入ったら、お魚もびっくりしちゃうと思う。僕は鱗も尻尾もないし、仲間じゃないもん。大人しくお魚が泳ぐのを眺めた。池に影が届くと、草の陰に隠れちゃう。待ってると出てくるよ。
「ただいま戻りました」
柔らかい声がして、僕は期待して振り返る。アガレスとアモンがいた。パパの手をぽんぽんと叩いて下ろしてもらい、駆けて行って抱き着く。
「おかえり! アガレス、アモン」
「あら、半ズボン履いてくれたんですね」
嬉しそうに言われて、お洋服を見せるためにくるりと回る。転びそうになったけど、アガレスが支えてくれた。
「ありがと」
「池が完成したようですね。ちょうど良かった。これはお土産です」
アガレスがそう言うと、頭の上を指差した。見上げたら、大きな水の塊がある。その中を赤や青の魚が泳いでいた。凄い! いっぱいいるよ!!
形も違うお魚が泳ぎ回る水は、アモンと一緒に運んだんだって。この池に入れるために捕まえてくれたの?
「お土産、嬉しい!」
「良かったな、カリス。二人とも感謝するぞ」
「いえ。こちらこそ、しっかり休ませていただきました」
互いにお礼をしてるパパやアガレスをきょろきょろ見て、また上に目を向けた。光がきらきらして、お魚がぐるぐる回る。ふと気づいたら、僕の上にいっぱいいた。僕みたいに、お魚も僕を見てるのかな。
「パパ、見て。お魚が僕を見てる」
「どれ……本当だな」
驚いた顔をしたパパの横で、アガレスやアモンも目を見開く。みんな知らなかったんだね。お魚も僕達を見てるんだよ。
「……カリス様、ですかね」
「多分そうだと思うわ」
アガレスやアモンが不思議そうに呟く。普段、お魚は人を見下ろすことはないよね。水はいつも足元にあるんだもん。珍しいんだと思う。
パパとアモンが協力して、池の水を減らした。そこへ新しく捕まえたお魚を水ごと放す。これでお魚がいっぱいになった。お魚は僕がいるところに寄ってきて、じっと見つめるんだ。何だか恥ずかしい。僕、変な顔してないよね?
虹色のお魚に混じって、赤や青、銀のお魚が泳いでた。いろんな色があると、池が綺麗。緑の草や白い砂もあるから、色がいっぱいになった。
「池の絵を描くか」
「うん!」
パパと手を繋いで絵を描く道具を取りに行く。見送るアモンが変なことを言った。
「カリス様がいなくなったら、魚が離れたわ」
アモンにも寄ってくると思うけど、違うのかな?
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