4人が本棚に入れています
本棚に追加
ピカっと辺りが一瞬明るくなり、遅れてゴロゴロと鳴り響く。
車に乗り込む前に、早くもズボンの裾が雨で濡れてしまった。
「さてさて。我が家の姫を助けに行きますか」
車に乗り込んで、そんなことを呟いた。
娘は車で30分ほどかかる駅の中で待機しているらしい。
他の友達はどうしたのだろうか。
きっと帰れていないだろうな。
まさかあいつ、俺に全員送らせるつもりか?
全く人使いが荒い。
ほんと誰に似たんだか。
そんな事を考えながら車を走らせていく。
街灯だけの住宅街を抜ければ、途端にネオンに包まれる。
都会の街は嵐の夜でも明るく輝いていて、巧みに人を誘い出す。
風に煽られながら歩く通行人に気をつけながら、ゆっくりと運転していく。
通り慣れた道路だが、大雨の日のフロントガラス越しに見る景色は、何だかいつもと違って見えた。
何となくちらりと外を眺めると、店の並びに違和感を覚えた。
「あれ? あの店……」
そこには、数週間前に閉店してしまった、個人経営の居酒屋があった。
ただ休業してただけだったのか?
いや、でも確かに看板がおりてたような気がするんだけど……。
赤信号に差し掛かり、スピードを落としていく。
不思議に思って潰れたはずの居酒屋を凝視していると、突然窓ガラスをノックされた。
最初のコメントを投稿しよう!