最後のドライブはどしゃ降りの彼方

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 しばらく放心状態になってしまい、何も考えることができなくなった。  車を発進することもできない。  フロントガラスに打ち付ける雨音を、延々と聞き流していた。  不意にスマホがポケットの中で持続的に振動し、はっと我に返る。  娘からメッセージが続けざまに送られてきた。 "今どこ?" "大丈夫?" "急かしてるわけじゃないよ!" "結構時間経ってるから、事故ってないかなって思っただけ"  時計を確認すると、家から出て既に一時間半も経っていた。  心配させてしまったらしい。 「やばい。急がないと」  雨で気温が下がっており、長時間外にいるのは辛いだろう。  早く娘を迎えに行ってやらないと。 "もうすぐ着く"  短くそう返信して、車を走らせた。
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