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猫と兎
「あなたってウサギみたいね」
彼女は床に寝転ぶと僕に背を向けたまま、何の気は無しにそう呟いた。
「そんなキミは猫みたいだよね」
「猫はね、自由を愛する使者なのよ?」
戯けながら尻尾の代わりに左右の足をパタパタさせる。今日は機嫌が良いみたいだ。
「僕ってそんなにウサギっぽいのかな?」
「ええ。寂しいと死んじゃいそうな所とか。とてもウサギっぽいと思うわ」
また悪戯っぽく笑う。
掴み所が無くて、いつか何処かに行ってしまいそうで、それがいつも僕を堪らなく不安にさせるんだ。
不意に振り返る彼女は不安そうな表情を湛えた僕を見て優しく微笑んだ。
「大丈夫、猫はちゃんと自分の家には帰って来るものだから」
気紛れで、悪戯っぽくて、自由を愛するキミはやっぱり何処までも猫みたいだ。
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