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第1章
みなが注目している。
応援で来た別の交番の者はぽかんと口を開け、あっけに取られたような表情をし、駆けつけた機動捜査隊の若い隊員は頬を染め、両手で自分の頰を押さえ、所轄のベテラン刑事課員はやれやれとでも言うように頭を押さえていた。
視線の中心、野次馬の注目さえ集めている中で、石川静は美しいと言われることの多い色白の小顔を羞恥で真っ赤に染め、怒りで表情を歪ませている。
「君に一目惚れした。僕の恋人になってほしい」
目の前の男は静に熱っぽい眼差しをむけ、愛の言葉を言い放つ。
しかし、そんな言葉に喜ぶわけがなかった。
場所を考えない告白、許可なく握られた手、何より大嫌いな『一目惚れ』という言葉に反応して、頭に血が昇り詰めている。もう爆発寸前だ。
目を見開く。もう一度、握られた手の甲にキスされた瞬間、堪えていた静の怒りが弾けた。
「ふざけんな!」
「おい! 落ち着け静!」
思い切り拳を振りかぶった静を坂元が後ろから羽交い締めにして押さえる。
現場は先ほどのひったくりの現行犯逮捕劇でまだ騒然としている。
そんな中、新たな問題が起ころうとしていた。
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