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暫く僕が悩んでいると、急に妻は席を立って僕に言う。
「あぁもう、考えてても出てこないわコレ。とりあえず私は会社に行くから、あなたも適当に出勤しなさいよ」
こんな状態で会社へ行くなど極めて呑気だな、と僕は思う。こっちは君と違って、怒りを受けなければならない立場だというのに、何故僕が平然としていられると思うのだろうか。
立場を利用した圧力。これがパワハラか。
「もう、真面目に考え出してくれたのはありがたいけど、たぶんもう出てこないでしょ? 忘れたということは、どうでもいいことだったわけだし、忘れましょ?」
僕が最初に言った台詞を、よくもまぁズケズケと。誰のせいで僕がこんなに悩んでいると思っているんだ。
「帰りに買い物してくるけど、夕飯どうする? 何か食べたいものある?」
妻は聞いてくる。
しかし今は夕飯なんてどうでもいい。
どうでもいいことでグダグダ、グダグダ、ピーチク、パーチク。なんなんだ。
腹が立ってきたので勢いに任せて僕は言う。
「……うるさいなぁ」
少し間を空けて、妻は返してくる。
「今日の夕飯は、八宝菜にします」
……なんとなく、全てを把握された気がした。
〈了〉
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